”事業承継税制”という専門用語をワイドショーやニュース番組で聞くことになるとは。何のニュースかと言うと例の芸能事務所の件です。
事業承継税制とは中小企業の事業をスムーズに引き継ぐために、株式に係る贈与税や相続税を猶予する制度です。
社長の平均年齢は年々上がり60歳を超えていて、後継者不足から廃業に追い込まれる中小企業も少なくありません。
身内で後継者が決まっていても、株式を引き継ぐ際に多額の相続税がかかり、事業承継の障害になっていました。
中小企業の株式は上場企業のように市場で売買ができないにも関わらず、相続税の計算上は支配権を高く見積もるため評価がかなり高くなります。
そこで事業をそのまま引き継いだ場合に贈与税や相続税を猶予する特例が2009年に創設されました。
ところが事業承継税制はあまり普及しませんでした。
贈与税や相続税は免除されるわけではなく、条件つきで”猶予”されているだけです。
条件を満たさなくなると利子と共に高額の贈与税や相続税を払わなければなりません。
この条件の厳しさが普及のネックになっていました。
<事業承継税制の継続要件>(相続税)
① 5年以内
・社長を交代しない
・株は1株も売ってはいけない
・相続時の雇用の8割を維持する
・資産管理会社に該当しない
② 5年経過後
・資産管理会社に該当しない
・株を売った場合、その割合に応じて相続税納付
その後、少しずつ要件が緩和され、2018年に期間限定の「特例措置」が導入されました。これに伴って従来の制度は「一般措置」と呼ばれています。
特例措置では次のような点が変わりました。
・雇用8割維持:事実上撤廃(下回った場合、報告書を提出すればOK)
・対象株式 :2/3⇒全株式
・納税猶予割合:相続税80%(一般では2割は納付)⇒100%
・後継者 :1人⇒最大3人
・事業継続困難:免除なし⇒免除あり
・適用期限 :特例は期間限定(H30.1.1~R9.12.31の10年間)
・事前計画 :一般は不要⇒特例はR5.3.31までに特例承継計画提出
例の事務所はこの特例措置を使っているそうです。
廃業という話も出ていますが、事業承継税制はどうなるのでしょうか。
(つづく)