相続放棄の影響 ①

posted by 2023.09.6

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 亡くなった方に借金が多い場合に相続放棄をすることがあります。

 相続放棄は亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出して受理されると認められます。
相続放棄は被相続人の権利義務の承継を拒否する手続きなので、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がないことになります。

 

 ただし相続放棄していても受け取れるものもあります。

 

① 生命保険金、生命保険契約に関する権利、退職手当金等

 亡くなった時点で被相続人が所有していた財産ではないため、民法上の相続財産には該当しません。
亡くなったことにより契約に基づいて相続人固有の財産になったため、相続放棄に関係なく受け取れます。

 

② 遺族年金・未支給年金

 遺族年金遺族の生活保障のために支給されるもので、遺族固有の権利であることから相続財産には該当しません。

 未支給年金は亡くなった時点で未払になっている年金のことで、年金自体が相続されない一代限りの財産であることから相続財産に含まれません。
亡くなった月までの未支給年金は、一定要件を満たす遺族が申請することで受け取れる遺族固有の財産に該当します。

 なお、遺族年金は所得税非課税ですが、未支給年金は一時所得として所得税が課税されます(50万円の控除あり)。

 

③ 墓地・仏壇などの祭祀財産

 墓地や仏壇などは、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する者が受け継ぐとされています。
通常の相続財産とは取扱いが異なるため、相続放棄をしていても祭祀を主催する者に該当すれば受け取ることができます。
また、お葬式の際の香典についても喪主に対する贈与の性質があるため、相続放棄していても受け取ることができます。

 

 ①の生命保険金等については、民法上の相続財産に該当しませんが、相続税はかかります。
生命保険については被相続人が保険料を支払っていたこと、死亡退職金については被相続人の勤務に対する支払いであることから、出所が被相続人ということになり、相続財産と「みなして」課税されます。

 

 相続放棄している場合には相続税の計算も変わる部分が多いため、次回その内容を見ていきます。