昨日の続きで相続放棄と相続税の関係について見ていきます。
1.変わらない項目
<相続税の総額>
日本の相続税は分け方によって税額が変わらない計算方式となっています。
すべての財産を合計して、それを法定相続分で相続したと仮定して相続税の総額を計算します。
その後、相続税の総額を実際に相続した財産の割合に応じて各自に振り分けます。
各自に振り分けられた後で、配偶者軽減の適用など人によって相続税額が減ることはありますが、特例を使う前の相続税の総額はどう分けても変わりません。
相続の放棄があった場合も同様で、放棄がなかったものとして相続税の総額を計算します。
したがって基礎控除も変わりませんし、放棄のない状態と相続税の総額は同じになります。
<障害者控除・未成年者控除>
相続人という限定がないため、相続の放棄をしていても障害者控除及び未成年者控除は受けることができます。
2.相続税が増える項目
<生命保険金及び退職手当金>
生命保険金と(死亡)退職手当金には非課税枠があります。
非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」で計算します。
放棄があっても法定相続人の数は変わらないので非課税枠は変動しませんが、非課税の規定を使えるのは「相続人」に限られます。
相続の放棄をすると「相続人」でなくなっているため、非課税枠を使うことができなくなります。
<債務控除>
借入金や未払金などマイナスの財産を引き継いだ場合は相続財産から控除できます。
ただし、この規定も相続人しか使えないため、相続の放棄をした場合にはたとえ実際に払っていたとしても債務控除できません。
なお葬式費用は相続の放棄をしていても変わらず控除することができます。
<相次相続控除>
前の相続から10年以内に次の相続が起こった場合には相続税額を軽減する「相次相続控除」という制度があります。
この規定は相続人であることが条件であるため、相続の放棄をした場合には使うことができません。
事例として多そうなのが生命保険金と退職手当金です。
相続放棄をしていても受け取れますが、非課税枠がない分、相続税はかかりやすくなります。
非課税枠以下なので申告しなくていい、と勘違いしないようにしましょう。