ATM出金と相続税

posted by 2023.08.21

atm_woman

 相続税の調査では、さまざまなことを世間話風に聞かれます。

 その1つが亡くなった方の病状や入院に関することです。
これは本人の意思能力がどの程度あったかということと諸々の事務手続きを本人がどこまで出来ていたか、つまり財産を誰が管理していたかを確認するのが目的です。

 

 例えば入院していたとなれば自分で銀行に行ったり買物に行ったりといったことは出来なかったはずですし、認知症の症状によっては入出金の指示も出来ないこともあり得ます。

 とは言え、病院や介護施設への支払いや生活費は必要ですし、本人が銀行に行けないとなると家族がATMで出金するのはやむを得ない部分があります。
本人確認が不要なATMの場合、通常は50万円、カードの種類によっては100~200万円も出金可能なようです。
ただし、度を過ぎると相続税の調査でも問題視されます。

 

 先日公開された判例では、約2年の間にATMで1902回、合計14億3000万円出金していたという事例が出ていました。
被相続人は認知症で老人保健施設に入所していたこと等から、諸々の事情を考慮すると相続人が出金していたと認定されました。
その結果、相続財産に不当利得返還請求権が漏れていると指摘され、相続税の更正処分と重加算税賦課決定処分が行われることとなりました。

 認定にあたって、税務署は出金の日付や場所、相続人のETC利用履歴等を細かく調べ上げて、反面調査として入所施設やコンビニ店員にもヒアリングしていました。

 

 口座から出金して通帳に残高がなければ申告しなくていい、という誤解も未だにあるようですが、税務署はそんなに甘くありません。
相続税の問題だけでなく、過度な出金は民法上も問題になります。
代理で出金したお金をどう使ったかあとで説明できるように、領収書やメモを残すようにしましょう。