来年3月までの事業承継税制 ③

posted by 2023.07.31

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 前回の続きで事業承継税制一般措置特例措置の違いについて確認します。

 

5.承継パターン

・一般:複数の株主から1人の後継者
・特例:複数の株主から最大3人の後継者

 兄弟で複数代表で経営していく場合が想定されています。

 

6.雇用確保要件

・一般:承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要
・特例:弾力化

 一般での一番のネックがこの要件でした。
経営する立場としては将来のことが分からない中で何が何でも雇用を維持しなければならない、というのは大きなプレッシャーになっていました。
特に従業員数が少ない中小企業ほど厳しい要件と言えます。
例えば従業員が4人の場合、1人退職すると要件を下回ってしまいます。
導入当初は8割を下回った瞬間にアウトでしたが、改正で5年間の平均で8割に緩和されました。

 さらに特例では8割を下回った理由を記載した報告書を知事に提出すればいいだけになったので、事実上この要件は努力目標になり、下回ったことを理由に納税猶予が取り消されることはなくなりました。

 

7.事業継続が困難な場合

・一般:規定なし
・特例:免除あり

 事業継続が困難な場合とは、「過去3年間のうち2年以上赤字または売上減、有利子負債≧売上の6か月分、類似業種の上場企業の株価が前年の株価を下回る、心身の故障等により後継者による事業の継続が困難」のいずれかの状態を言います。
これらの理由により株を売った場合や会社を解散した場合には、猶予税額を再計算して株価が下がった分については免除されます。

 一般措置では業績が悪化して株を売却しても、元の猶予税額をベースに納付が必要でしたが、特例措置では実際の売却額や解散時の相続税評価額など払える額をベースに再計算されます。

 

8.相続時精算課税の適用

・一般:60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)や孫への贈与
・特例:60歳以上の者から18歳以上の者への贈与

 違いが分かりにくいですが、事業承継税制の特例措置を使う場合、相続時精算課税が拡大されます。
相続時精算課税は身内だけが対象ですが、事業承継税制と組み合わせれば他人(親族外承継)でもOKです。
事業承継税制では贈与税が猶予されますが、要件を満たさなくなると納付する必要があります。
贈与税は超過累進税率で最高55%かかりますが、事前に相続時精算課税を選択していれば税率は高くでも20%で済みます。
万が一、事業承継税制の要件を満たさなくなった場合のダメージを小さくしてくれる保険のような意味合いがあります。

 

 一般と特例では圧倒的に特例が有利でデメリットもありません。
どうせ事業承継税制を使うなら(あるいは使う可能性があれば)まずは来年3月までに特例承継計画を出しておいて、特例を選べるようにしておくのがベターです。