臨時所得と変動所得

posted by 2023.07.3

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 所得税は毎年確定申告をして1月から12月の1年単位で計算します。

 このルールは所得の種類や多寡に関わらず適用されますが、中には年によって所得が大きく変動する場合もあります。
例えばプロ野球選手になった時に契約金で1億円もらうとかネットで漫画を発表して大当たりしたような場合です。

 所得税の仕組みは超過累進税率で、所得が大きいほど税率も上がるのでたまたま所得が多い年はものすごい税額になってしまいます。
苦節何年で頑張ってきて、たまたま所得が多い年にガバッと税金を取られるのも気の毒というか課税上公平とも言えない部分があるため、一定の業種については平均で所得税を計算する特例が認められています。

 

1.対象業種

① 変動所得(事業・雑所得)

・漁獲やのりの採取による所得(昆布やワカメはNG)

・はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得(海老、鯉、鱒などはNG)

・原稿若しくは作曲の報酬に係る所得又は著作権の使用料に係る所得(漫画家、小説家、音楽家、写真家など)

 

② 臨時所得(事業・不動産・雑所得)

・不動産の長期貸付(3年以上)による権利金(年間使用料の2年分以上)

・プロ野球選手等が契約時に一時に取得する契約金に係る所得(3年以上の専属契約で年俸の2年分以上)

・その他の所得で臨時的に生ずるもの(公共工事や災害の補償金など)

 変動所得は限定列挙なので当てはまるもののみですが、臨時所得は例示など性質が同じものなら含まれます

 

2.条件

① 変動所得

・その年の変動所得の金額が前年と前々年の変動所得の平均を超える
  かつ
・変動所得がその年の総所得金額の20%以上

② 臨時所得

・臨時所得がその年の総所得金額の20%以上

 

3.計算方法

 算式は複雑ですが、言葉で簡単に言うと5で割って低い税率で所得税を計算してから5倍するという「5分5条方式」で計算します。

 課税総所得金額が平均課税対象金額を超える場合には次のような算式になります。

(1) 調整所得金額

・(課税総所得金額-平均課税対象金額 × 4/5)=A

・A × 通常の税率=B

(2) 特別所得金額

・課税総所得金額-A=C

・C×平均税率(B/A)=D

(3) 合計税額 B+D

 

 例えば高校生がプロ野球選手になって1億円の契約金を受け取った場合、通常で計算すると税金は約5000万円(住民税込み)になりますが、特例を使うと約3500万円に減ります(それでも高いですが…)。

 

 使うことがレアな規定ですが、小説執筆や発明で大当たりしたら思い出して下さい。