TOBと申告漏れ

posted by 2023.06.26

4175610_s

 国税庁から、TOB成立後の申告漏れに関する資料が発表されていました。

 TOB(株式公開買い付け)とは、公開買付者が買付期間、買付価格、買付予定株数どを公表し、不特定多数の株主から直接的に株式の買付を行うことを言います。M&Aの手法の一つで、企業の経営権などを取得するために株を買い集める際に利用されます。

 

 TOBに応じる場合は上場株式の売却なので特に通常の取引きと変わるところがないのですが、申告漏れが起きているのはTOBに応じなかった場合です。
TOB成立後に上場廃止された場合、上場株式でなくなるため、特定口座から一般口座へ管理が移されます。
これだけではまだ売ったわけではないので税金は関係ありませんが、その後完全子会社化を目指す公開買付者が残りの株式全てを強制的に買い取ることがあります。
すると一般口座での株式売却になるため、確定申告が必要になります。
「特定口座源泉徴収あり」を選択していた場合はその延長線上で考えてしまい、申告漏れが起きていたようです。

 

 国税庁が支払調書から379件をサンプル調査したところ、半分以上の199件で5億円近くの申告漏れがあり、追徴税額は約7300万円(1件当たり36万円)に上ったようです。中には1億8000万円もの申告漏れもあったようです。

 

 上場株式の売却時の取扱いも整理しておきます。

<申告の要否>

・特定口座 源泉徴収あり⇒申告不要(申告することも可)

・特定口座 源泉徴収なし⇒申告必要

・一般口座⇒申告必要 ※TOB成立後の売却

・NISA⇒申告不要

 

<税率>

・特定口座(申告不要)  ⇒源泉徴収20.315%で完結

・特定口座(申告分離課税)⇒申告時に20.315%の課税

・一般口座(申告分離課税)⇒申告時に20.315%の課税

・NISA(申告不要)  ⇒非課税

 

 なお上場廃止後に売却した場合は、他の上場株式売却との損益通算や繰越控除もできないので、こちらも注意が必要です。