前回の続きで新しい遺言制度について見ていきます。
自筆証書遺言の需要は多いものの次のようなデメリットがあります。
・紛失や盗難のリスク
・形式が厳格で不備があれば無効になってしまう。
・家庭裁判所の検認が必要
自筆証書遺言の手軽さを残しつつ、デメリットを解消するために導入されたのが2020年に始まった「遺言書保管制度」や導入が検討されている「デジタル遺言」です。
1.遺言書保管制度
① 概要
自筆証書遺言を法務局が安価で預かってくれる制度。
② メリット
・法務局で形式チェックをしてくれるので無効になるリスクが軽減される。
・法務局で保管するので紛失や偽造のリスクがない。
・費用が安く、財産の変化に応じて書き換えがしやすい。
・従来の自筆証書遺言はあるかどうかを調べる手段がないが、遺言書保管制度では死亡時に遺言の存在が相続人に通知される
・死亡時の検認が不要で手続きがスムーズ
③ デメリット
・法務局で形式チェックはしてくれるが、遺留分の問題など内容の相談はできない。
・サイズや余白など様式に関して一定のルールがある。
・本人が予約した上で法務局に出向く必要がある。
2.デジタル遺言(検討中)
① 概要
ネット上のソフトで簡単に作成できて、クラウド上で保管する制度。
② メリット
・ブロックチェーン技術でクラウド上に保管するので改ざんや紛失のリスクがない。
・フォーマットに従って入力するため作成が簡単で、かつ形式的な不備を防ぐことができる。
・ネット上で完結すれば法務局に出向く必要もない。
③ デメリット
・通知制度については未定
・パソコンやスマホを一定レベルで使える必要がある。
遺言書保管制度は公正証書遺言と自筆証書遺言の”ええとこ取り”をしたような制度で、デジタル遺言はそれをさらに簡単にしてハードルを下げようとする制度と言えます。
デジタル遺言の導入にはまだ数年かかりそうですが使いやすい制度になることが期待されます。