暦年課税か精算課税か!?①

posted by 2023.04.12

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 毎年子どもや孫に年間110万円を贈与されている方もおられると思いますが、来年からこの”習慣”が変わるかも知れません。

 

 現行の暦年課税制度では基礎控除が110万円あります。
もらった側でカウントして年間110万円以下であれば贈与税額は0円で申告も不要です。
この枠が縮小されるという噂もありましたが、そうはならず亡くなった時に相続財産に加算される生前贈与加算の期間が3年⇒7年に延長されるという内容で増税が行われました。
改正は令和6年1月1日以降の贈与に適用されるので、今年は今まで通り贈与してもらっても影響ありません。

 

 その代わりというわけではないですが、精算課税制度が緩和されました。

 相続時精算課税制度はもともと高齢者から若者への財産移転の促進を目的として平成15年に導入されました。
贈与税は相続税回避を防ぐために税率が高く設定されており、例えば1000万円贈与した場合には177万円もの贈与税がかかります。
それなら相続税がかからない人であれば、相続まで待とうかということになります。

 そこで一生分の基礎控除を先取りするイメージで累計2500万円までなら贈与税をかけない精算課税制度が導入されました(2500万円を超える部分は税率20%)。
贈与の段階では2500万円まで贈与税はかかりませんが、相続の段階では贈与分を戻して再計算することになります。
元々贈与税がかからない人であれば相続税を再計算しても0円で変わらないですし、国としても税収に影響はありません。

 いい制度に見えますがさほど普及しませんでした。
贈与しても結局加算しないといけないので資産家にとっては相続対策にならないためです。
従来の暦年課税制度であれば、非課税(110万円)の範囲でコツコツ贈与すれば、亡くなる前3年以内の分は加算する必要がありますが、それ以前の分は贈与税0円で終了です。
精算課税制度だとこのコツコツ贈与が使えなくなってしまいます。

 

 国としては精算課税制度をもっと使って欲しいのでこのデメリットを解消するための改正が行われました。
精算課税制度を選択しても別枠で110万円の非課税枠が使えて、しかも110万円以下の部分は3年以内どころか亡くなった前年分であっても相続財産に加算する必要がありません。

 随分サービスしたなという印象ですが、国としては若者への財産移転を進めたいという目的だけでなく、何年前でも加算できて相続対策になりにくい精算課税制度をメインにしていきたいという狙いもありそうです。

 

 いろいろ書いてきましたが、改正後の精算課税制度はアリなんでしょうか、それともナシなんでしょうか。

(つづく)