パートの壁問題

posted by 2022.10.28

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 この時期になると中小企業の社長からよく受ける質問(嘆き?)があります。

 「パートの人は年間なんぼまで働けるんやったっけ?」

 というのも年収の上限を気にして勤務時間を調整するパートやアルバイトの方が増えてくるためです。
ただでさえ人手不足なのに勤務時間を減らす人が出てくると他の方にもしわ寄せも行くし、製造業、小売業、飲食業などにおける現場は人のやり繰りに苦労しているのが現状です。

 

 最低賃金の引き上げ人手不足などにより時給は年々上昇しています。
リクルートのデータによると2012年9月は947円でしたが、2022年9月では1141円と約20%上昇しています。
これを年収103万円に当てはめると、2012年は月90時間まで働けていたのが、2022年では75時間と大きく減ってしまいます。

 

 壁は103万円だけじゃない、ということはだいぶ浸透してきましたが、パート主婦を例に改めて”壁”を整理しておきます。

①  98万円:本人の住民税非課税

② 103万円:本人の所得税非課税、夫の扶養控除、配偶者控除

③ 106万円:本人の社会保険加入(要件あり)

④ 130万円:夫の社会保険扶養から外れる

⑤ 150万円:夫の所得税の配偶者特別控除38万円

⑥ 201万円:夫の所得税の配偶者特別控除消滅

 

 所得税の38万円控除という観点でみると②の103万円ではなく、⑤の150万円が上限になります。

そのため最近では④の130万円を気にする人が増えています。
夫の社会保険の扶養範囲であれば、年金も健康保険も負担がありませんが、130万円以上になると自分で「国民年金+国民健康保険」を払うか、勤務先で「社会保険」に加入する必要があり、一気に負担が増えます。

 

 さらに④の130万円の壁は③の106万円の壁に移行しつつあります。

 次の要件を満たした場合には本人が勤務先で社会保険に加入する必要があります。
・所定労働時間が週20時間以上(残業除く)
・雇用期間が2か月以上の見込み
・1か月の賃金が8.8万円超(交通費、残業代、賞与は含まず)
・学生ではない
・従業員数が501人以上の企業⇒令和4年10月から101人以上、令和6年10月から51人以上

 

 今後も時給の上昇と社会保険の適用拡大により働く時間を調整する方は増えていきそうです。
賃金引き上げの政策を進めるのであれば”壁”問題にも何かしら手当がされることを期待したいところです。

 現行制度を前提として考えると社会保険料の負担は会社にとって軽くはないですが、現場が安定して福利厚生面も向上するのでトータルではプラスと言えるかも知れません。