前回は相続時の計算の仕組みによる一次相続と二次相続の違いを見ていきましたが、今回は節税の観点での違いを確認します。
<現預金>
一次相続で配偶者が相続したとしても贈与がしやすく相続対策が可能な財産と言えます。
分けやすく贈与の際にコストもかからないので二次相続までの間に贈与をすれば相続対象を減らすことができます。
配偶者が現預金を相続することで安心感が得られるというメリットもあります。
<非上場株式>
同族株式などで値上がりが予想される場合は配偶者を経ずに直接子どもに相続する方が有利になります。
一方、相続時の退職金支給などにより数年間株価が下がる場合は、タイミングとしては贈与のチャンスなので一旦配偶者が相続してその期間に贈与するのもアリです。
<自宅>
まず一般論として不動産の名義変更には登記費用がかかるので、諸費用の面では相続の回数が減る子どもへの一次相続の方が有利です。
節税効果の高い小規模宅地等の特例については配偶者ではなく、子どもで使ったことが節税になりやすいです。
というのも配偶者に関しては配偶者の税額軽減により相続税額がゼロになることも多く、その場合には小規模宅地等の特例を使う意味がないためです。
配偶者が一次相続した方が有利になるケースとしては配偶者居住権の利用があります。
配偶者居住権とは自宅不動産を「住む権利」と「売る権利等」に分解して、配偶者が「住む権利」を一次相続する制度ですが、二次相続の際には「住む権利」部分は消滅するため、節税効果があります。
<収益不動産>
収入が発生する不動産であれば、早く子どもに渡せばその期間の収入を子どもが受け取ることができるので、二次相続に向けて配偶者の財産が増えることにもなりません。
検討する項目が多く複雑なので、申告の際には税理士に依頼して、一次二次両方の相続税計算をして様々な組み合わせをシミュレーションするようにしましょう。