役員報酬の返納

posted by 2022.08.22

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 金融庁から業務改善命令を受けた保険会社が前社長に退職金の返還を求める、というニュースが出ていました。
法的な強制力はないので実際に返還されるかどうか分かりませんが、返還された場合はどう処理されるのでしょうか。

この事例は特殊ですが、経営状況が悪化した場合に役員が報酬の20%カットなどを申し出ることもあります。

 

【会社】

・受入:雑収入(消費税不課税)

 退職金や役員報酬のマイナスというより、一旦支給したものの中から寄付してもらったと考えるので雑収入として受け入れます。

・支払:特に処理なし

 役員報酬としては普通に支払っているので定期同額給与の原則から外れていません。したがって減額前の額面金額がそのまま経費になります。

 

【本人】

・特に変化なし

 役員報酬が”減額”された場合は、社会保険料や所得税がその分減りますが、一旦受け取ったものを自主的に”返納”しているだけなので税金等は通常どおりかかります。

 

 社会保険料や所得税を減らすのであれば役員報酬自体を減額する必要があります。
役員報酬は定期同額でないと経費にならないので、原則として期首から3か月の期間にしか変更できません。
ただし著しい経営悪化がある場合には期中でも減額できます。
その場合、一旦下げたら次の変更期間(期首から3か月以内)までは下げた状態でキープする必要があります。
3か月だけ下げて業績が回復してきたので元に戻します、とすると出っ張った部分が税務上経費にならず、法人税の追加負担が発生します。

 

 法人税法は”利益操作”ということに関して厳しい考え方を取っているので、役員にとっては少々酷な制度と言えるかも知れません。
社会保険料や税金への影響も考慮しつつ、変更を判断するようにしましょう。