遺産分割の期限 ① 相続税

posted by 2022.01.13

kakushitsu_chichi_musuko

 相続があった場合、遺産分割協議により誰が相続するかを決めますが現行の法律では特に期限がありません

 

 相続税の申告期限は亡くなってから10か月以内ですが、相続税が発生しないのであればこの10か月にこだわる必要もありません。
不動産に関して遺産分割協議がまとまらないと相続登記がされないままが放置され、一体誰が相続したのか分からない所有者不明土地問題が発生します。
その場合、土地の活用が促進されないだけでなく、災害復旧などにおいても障害となっています。
そこで民法が改正され、施行日が2023年4月1日と定められました。

この改正の内容を現行の相続税の取扱いと共に確認していきます。

 

(1)相続税の期限内申告

<期限>

 死亡した日(正確には死亡を知った日)の翌日から10か月以内

<影響>

 期限を過ぎた場合、延滞税や加算税が発生します。そのため税額が発生する場合は未分割であっても申告書を提出します。
ただし遺産分割の成立を要件とする特例(小規模宅地の評価減、配偶者の税額軽減、相続税の納税猶予等)は使えないため、相続税は高くなります。

 

(2)相続税の特例利用

<期限>

 申告期限から3年以内(死亡から3年10か月以内)

<影響>

 未分割となった財産について3年以内に分割協議が成立すれば小規模宅地の評価減や配偶者の税額軽減を使うことができます。
これらはかなりの節税効果があるため、未分割となった場合でも一定の分割促進効果があります。

<手続き>

① 未分割で期限内(死亡から10か月以内)に申告する際に『申告後3年以内の分割見込書』を添付

② 分割が成立した際には、分割の翌日から4か月以内に『更正の請求』をすれば払いすぎている相続税の還付を受けることができます
逆に追加で相続税が発生する場合には『修正申告書』を提出します。

 

(3)裁判等による長期化

<期限>
 税務署長の承認を受ければ期限なし

<影響>
 裁判等で長期化して3年を過ぎそうであれば承認申請書を提出して税務署長の承認を受けます。
承認を受ければ判決確定の日等まで待ってもらえるので事実上期限はない状態になります。

<手続き>

① 未分割で期限内(死亡から10か月以内)に申告する際に『申告後3年以内の分割見込書』を添付

申告期限から3年+2か月以内(死亡から4年以内)に『遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書』を提出

③ 分割が成立した場合は(2)と同様

 この特例を受けるには訴えの提起がされている、調停の申立てがされているなど正式な法的手続きが3年以内に始まっていることが前提です。
単に当事者間の話し合いが長期化している場合や放置されている場合には承認を受けることができません。

 

ここまでが相続税の枠組みの中での期限や特例です。

登記自体が義務化される改正民法の内容については次回確認します。