相続時精算課税 VS 暦年課税 ① 改正?

posted by 2021.09.15

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 涼しくなってくると仕事柄来年の税制改正が気になってきますが、去年の税制改正大綱の中の「基本的考え方」に気になる書きぶりがありました。

 

「わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。
一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。」

 贈与税は相続税の補完税とされています。
生前にじゃんじゃん贈与されてしまうと相続税の課税財産がなくなるので、それを防ぐべく贈与税の税率はかなり高くなっています
ただし、非課税枠を使って多くの人に時間を掛けてコツコツ贈与すれば、節税は十分可能です。

 

「諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。」

 日本では亡くなる前3年間の贈与について、急な対策を防ぐ観点から相続税の計算をする際に足し戻して、税金の計算上は「なかったこと」にします。
増税する際には欧米の税制を参考にすることが多いですが、足し戻す期間は日本の3年間より長くなっています。
イギリスは7年、フランスは15年、アメリカは制限なくすべて加算です。

 

「今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」

???
何か増税のにおいがします。
極端な可能性も含めて次のような改正が考えられます。

・暦年課税制度をなくしてすべて相続時精算課税贈与にする。
・暦年課税制度の110万円非課税枠を変更する。
・暦年課税制度の3年以内加算の期間を長くする。

 今のところ比較的可能性が高そうなのは3つめの加算の期間延長ですが、こういった”検討”は毎年議題に上がりつつ結局変わらないことも多いので今の段階では何とも言えません。

 ただ長期的かつ多額の贈与を考えておられる場合、前提がガラッと変わる可能性もあるので年末の税制改正大綱を待ってもいいかも知れません。

 

 次回は現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度を比較していきます。