類似業種比準価額 ②

posted by 2021.07.15

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 前回の続きでコロナ禍が株価評価に与える影響を見ていきます。

 

 会社の規模によって評価方法は異なりますが、類似業種比準価額だけを使う大会社が分かりやすいので大会社を基準に検討します。
業種についてはコロナの影響が大きい宿泊業(104番 その他の宿泊業、飲食サービス業)とアパレル(81番 織物・衣服・身の回り品小売業)を使います。

 

<類似業種比準価額の算定方法>

① 同業平均との比較

 評価会社の配当、利益、純資産価額が同業平均とどれぐらい離れているかを計算し、3つの平均を取ります。

② ベースとなる株価を選択

 評価時点の過去3か月の同業平均の月ごとの平均株価、前年平均、過去2年平均の5つの株価のうち最も低いものを選択します(評価の安全性)。

③ ② × ① × 0.7(大会社)

 

<① 同業平均との比較>

≪宿泊業≫
・令和3年:B配当4.2円、C利益29円、D純資産230円

・令和2年:B配当3.1円、C利益39円、D純資産197円

≪アパレル≫
・令和3年:B配当7.2円、C利益24円、D純資産221円

・令和2年:B配当8.7円、C利益36円、D純資産253円

≪傾向≫
利益に関してはコロナの影響を受けた期間とタイムラグの関係なのか令和3年の方が小さくなっています。

・配当と純資産については業種によって動きに差はありますが、それほど大きな変動にはなっていません。

 

<② ベースとなる株価を選択>(最新データの4月を基準に)

≪宿泊業≫
・令和3年:前年平均443円、4月440円、3月443円、2月446円、過去2年平均476円 ∴最小は4月の440円

・令和2年:前年平均456円、4月325円、3月314円、2月425円、過去2年平均445円 ∴最小は3月の314円

≪アパレル≫
・令和3年:前年平均245円、4月304円、3月314円、2月297円、過去2年平均299円 ∴最小は前年平均の245円

・令和2年:前年平均493円、4月280円、3月302円、2月419円、過去2年平均486円 ∴最小は4月の280円

≪傾向≫
・宿泊業では去年の方が3割近く低くなっていますが、アパレルでは今年の方が前年平均の採用で低くなっています。

・毎月の株価については去年の2~4月の方が低くコロナ禍の影響がすぐ出ています。

 

<株の移転に適した時期かどうか>

・今回はあとで検証しているので比較できますが、去年の4月頃に「底」かどうかを判断するのは難しいと言えます。

・「② ベースとなる株価を選択」の中には前年平均もあるので、急激な景気悪化の翌年に贈与や売却を検討するのが現実的かも知れません。

・「① 同業平均との比較」は同業との乖離率を見ること、3つの判断要素の平均を取ることから影響はそれほど大きくないと言えます。

・今回は類似業種という他社の数字を元に検討しましたが、中会社や小会社の場合は自社の決算内容も影響します。コロナ禍による赤字や役員退職金支払い等による赤字が出た場合、その年や翌年翌々年は株価は下がる傾向にあります。

 

 非上場株式は現金化が困難な割には税法上高く評価されるので、事業承継する中でどう移転していくかは悩ましい問題です。
事業承継税制を活用する場合もありますが、単純贈与をするのであれば今年は検討してみる価値はあります。