役員退職金Q&A ② 税務編

posted by 2021.03.12

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 役員退職金の続きで税務関係のQ&Aを見ていきます。

 

<税務編>

Q5.功績倍率の相場は?

A5.税務調査や判例の積み重ねで相場観あり

役員退職金は「月額報酬 × 在職年数 × 功績倍率」で計算されます。
最後の功績倍率で大きく金額が変わるので、税務調査や裁判でも論点となってきました。
ケースバイケースですが、下記のような幅が許容範囲と考えられます。

・取締役   1.5~2.5
・代表取締役 2.5~3.0
・監査役   1.0~2.0

なお、功労加算金として3割程度上乗せされることがありますが、上乗せした状態で税務上の上限を判断します。
例えば、代取の功績倍率を「3.0」にしていて、ここに3割上乗せすると「3.9」になるのでさすがに多すぎると判断されそうです。

 

Q6.全額払うのが難しいので未払でもOK?

A6.OKだがずっと未払は不自然

役員退職金は多額になるので、身内の会社の場合は支払を待ってもらうことがあります。
未払いであってもちゃんと株主総会等で決議があれば金額は確定しているので経費にすることは可能です。
ただし、全く払われていない、あるいはずっと未払で残っているとなると信憑性に疑問符が付くので、一部だけでも払う、分割で払うなどしておくことがベターです。

 

Q7.代取を退任して取締役(監査役)になるが退職金支給できる?

A7.分掌変更=退職と認められれば退職金支給可能

役職が変わることを”分掌変更”と言いますが、分掌変更により職務内容が激変して実質的に退職と同様の事実があれば退職金の支給が認められます。

要件①:地位がダウン(代取⇒平取、常勤⇒非常勤、取締役⇒監査役)
要件②:給与が50%以上減
要件③:未払でなく退職金を払い切っている。
要件④:退職後に経営上主要な地位を占めていない。

 

Q8.勤続5年以下は増税?

A8.1/2軽減が消滅

受け取った退職金への所得税課税は大幅に軽減されています。

(退職金-退職所得控除)×1/2<分離課税>

「×1/2」があることで税率は半分になっていますが、勤続期間が5年以下の場合はこれがなくなります。
現状は5年以下の役員だけが対象ですが、税制改正により令和4年からは従業員であっても対象になります。

 

 役員退職金は金額が大きく、節税の手段として使われることも多いため、経費にできるかどうかしっかり確認しておく必要があります。