名義預金とは

posted by 2021.01.12

chokin_tsuchou

 前回の続きで調査でよく問題になる名義預金について見ていきます。

 

 「名義預金」とは読んで字のごとく、預金口座の名義人と実際に預金している人が異なる、いわば名義を借りている預金のことを言います。

 名義預金がよりテーマとなるのは、贈与税より相続税の調査です。
分かりやすい例で言うと、おじいちゃんが孫の名前で定期預金を作っていて、相続税の申告でそれを財産に含めないようなケースです。
昔に比べると預金口座を作る際の本人確認は厳しくなっていますが、実際にはまだまだあります。

 

 では名義預金になるかどうかのチェックポイントはどんなものでしょうか。
孫と被相続人である祖父母を例に確認します。

① 印鑑

 孫の通帳の届出印と祖父母の届出印が同じでないかチェックします。
ハンコが同じなら同じ人が作った口座であると考えられます。
また印鑑だけでなく、口座を作る際の「印鑑票」や資金移動の際の「入金票」といった書類も銀行には保管されているので筆跡もチェックしています。

 

② 保管状況

 通帳やハンコを誰が保管しているかをチェックします。
孫にあげたと言いつつ、通帳もハンコも祖父母が保管していれば名義を借りているだけで祖父母自身の預金と何ら変わりません。
ちゃんと申告して贈与していても通帳を渡していなければ贈与の事実の立証が弱くなってしまうので通帳やハンコも贈与を受けた人に管理してもらうようにしましょう。
また、贈与を受けた人が自由に消費していることや定期預金等の利息を受け取っているかどうかも判断のポイントとなります。
贈与を受けた預金口座が増える一方で全く減らない場合や利息を祖父母が受け取っているような場合は本当に贈与があったのかどうかという点が危うくなってきます。

 

③ 原資

 預金の出所がどこであるかをチェックします。
祖父母の口座から出金があり、同日にすぐ孫の口座にお金が入っていればお金が流れたと考えるのが自然です。
また贈与を受けた側の年齢や職業も判断に影響してきます。
収入がない小学生の孫に多額の預金があれば、贈与を受けていることが想定されます。
小口に分けて現金を経由していれば、はっきり祖父母と孫の預金をフローで紐付けできない場合もありますが、そういったケースでも年末残高を人別に集計してストックで預金の移動を推定してくることがあります。

 

④ 贈与事実の確認

 上記のような内容を踏まえて、贈与契約書や贈与税申告があるかをチェックします。
贈与契約書はあるに越したことはありませんが、通帳間の移動ではっきり記録が残っていたり、贈与税の申告をして納税している場合はそれが証拠になります。
そのため、贈与税の非課税枠110万円ピッタリではなく、120万円の贈与を振込でして贈与税1万円を払うケースもあります。

 

 相続税の調査においては、これらの項目のうち事前に確認できるものはチェックしていますし、亡くなった被相続人だけでなく親族全員や関係法人の口座もチェックした上で調査に来ていると思った方がいいでしょう。

 毎年の贈与の際には税務署はチェックしきれないので、資金移動に関して油断しがちですが、その分相続税申告の際には名義預金などの漏れがないようにいろんな角度から検証していますので甘く見ないようにしましょう。