供託と確定申告

posted by 2020.09.15

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 先週、「ノーベル賞受賞の本庶さんが22億円申告漏れ」という驚きのニュースがありましたが、これはどういうことなのでしょうか。

 報道によると、小野薬品からの特許料支払いが低すぎるとして本庶さんは受け取っていませんでしたが、小野薬品は法務局へ供託していて、これが所得にあたるという内容です。
申告漏れの額は4年で約22億円、追徴税額は加算税を含めて約7億円で、重加算税は課されていません。

 

 このニュースでポイントとなるのは”供託”という手続きです。
供託とは、何らかの理由により支払ったものを受け取ってもらえないときに、法務局などの供託所に預けることによって「支払ったこと」と同じ効果が得られる手続きです。
家賃の値上げ交渉の際などに行なわれることが多いですが、金額が合意できないからと言って支払わないと滞納してることになり、契約解除されてしまいます。そこで法務局に預けておくことによって「支払った」という事実を保証してもらいます。
その後、金額の合意ができた際に法務局から引き出して受け取ります。

 

 では税金の取扱いがどうなるかというと、供託の内容によって変わります。

 契約の存否が争われている場合は、判決や和解で収入金額が確定した年の収入とされます。
例えば、賃貸借契約で借主の契約違反を理由として貸主から明け渡し請求があった場合には、収入は「0」か「100」なので確定するまで収入にする必要はありません。
そして和解等で確定した場合は、その確定した年に一括して収入計上します。

 一方、契約内容で争われている場合は、確定している部分は通常どおり毎年の収入とされます。
例えば、賃貸借契約で貸主から値上げの要請があった場合に、借主が従来の家賃や納得している金額を供託すると、少なくともその部分は確定しているので貸主はたとえ1円も受け取っていない段階でも収入として認識する必要があります

 

 今回の特許料の例で言うと、本庶さんは約226億円の支払いを求めて訴訟をされていますが、小野薬品側は約22億円(4年分)を主張しています。
裁判がどういう結果になっても、この22億円は受け取るはずなので国税局は収入にあたると指摘し、修正申告に至っています。

 

 供託にも様々な手続きがありますが、何が争いになっていて、どこまでが確定しているかを見極めて税務処理を行うことになります。