概算取得費と市街地価格指数 ②

posted by 2020.09.11

document_data_bunseki

 前回の続きで譲渡所得を計算する際に「市街地価格指数」を使う方法について見ていきます。

 

 バブルの頃に5000万円ぐらいで買った土地を今年に2000万円で売却したとします。
バブルの頃だともう30年ほど前なので買った時の契約書を紛失していて、売ってくれた不動産会社に問い合わせようにも倒産していて連絡がつかない、というようなこともあり得ます。
 取得費が分からないので前回解説した概算取得費で計算すると、2000万円×5%=100万円が取得費になります。
そうなると2000万円-100万円=1900万円が譲渡所得になり、約386万円の譲渡税がかかります。
どう考えても損をしてるのに、書類が残っていないばっかりに多額の税金がかかるのは納得できないところがあります。

 このようなケースで、市街地価格指数を使って申告した方がいて、税務署と争いになりましたが、国税不服審判所が”合理的”と判断した平成12年の裁決事例があります。
この裁決事例以降、市街地価格指数を使って取得費を算定する方法は、”お墨付き”を得たものとして実務においても使用されています。

 

<市街地価格指数とは>
 一般社団法人日本不動産研究所が公表している宅地価格に関する統計データです。
年2回、不動産鑑定士が全国主要198都市の調査を行い、指数化して公表しています。
区分は地域が「全国、六大都市、六大都市以外」の3種、用途が「商業地、住宅地、工業地」の3種です。

 

<計算方法>
例:平成元年取得時の指数220、令和2年売却時の指数100、売却額2000万円

取得費 :2000万円 × 220/100=4400万円

譲渡所得:2000万円-4400万円=▲2400万円(譲渡税0円)

 

 実際の取得価額は分からないものの、第三者が公表している連続的なデータに基づいて、平均的な取得費を”推定”してるので近似値は求めることができます。

 ただし、この方法がすべての申告で認められているわけではなく、否認されている事例もあります。
理由としては拡大解釈し過ぎている、客観的な状況から推定値が正しいと言い切れない、更正の請求で還付請求しているので目立つといったことがありますが、否認事例の詳細は次回に続きます。