マルサ・レポート

posted by 2020.06.12

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 国税庁のHPで令和元年度の査察の活動状況が公表されていました。

 映画にもなった「マルサ」悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的とする、と報告書にも謳われています。
どんな業種が今マークされているか、どんな手口が使われているのか興味深いのでご紹介します。

 

1.処理件数165件 うち告発件数116件(70.3%)

着手件数、処理件数、告発件数とも減っています。
脱税が減ったというより複雑化した分、1件当たりにかかる時間が増えていると考えられます。処理件数のうち7割で告発に到っています。

 

2.一件当たりの脱税額(告発分)8000万円

毎年1億円前後で推移していますが今年はやや低めです。告発の目安となる脱税額は1億円ですが、悪質であれば金額に関係なく告発されます。

 

3.税目ごとの特徴

告発された116件の内訳は法人税64件、消費税32件、所得税17件、その他3件でした。
年々増加傾向だった消費税が減り、法人税が増えています。
消費税については増税に伴う国民感情も考慮して”不正還付”に重点的に取り組まれています。
法人税については”無申告””国際事案”を重点事案として積極的に取り組んでいるため、件数が増えているようです。

 

4.業種の特徴

多いのは①建設業、②不動産業、③人材派遣業、で上位3位は過去3年変わっていません。
景気のいい業界が上位に来る傾向があります。

 

5.脱税の手口

<法人税・消費税>

芸能プロダクションからスタイリスト業務を受注して多額の利益を得ていたが、申告義務を認識しながら法人税及び消費税の確定申告を一切していなかった。払った側で経費にしているため当然発覚。

<法人税>

投資ノウハウの提供会社が海外法人への請求書を偽造して架空の報酬を計上租税条約に基づく情報交換制度により不正取引を解明。

<所得税・法人税>

消費税還付コンサルで多額の利益を得ていた税理士が架空の手数料計上や売上除外をしていた。なお消費税還付コンサルの内容は金地金売買で課税売上割合を作る方法で現在は改正により不可

<現金の隠し場所>

・和ダンスに作り込まれた隠し戸の中に4000万円。
・個人名義で契約したとランクルームのスーツケースに1億4000万円

 

 脱税の手口については多少目先は変われども売上除外と架空経費というのは昔から変わりません。

 告発後、一審判決が出た124件はすべて有罪でうち5件は実刑判決です。
くれぐれも魔が刺すことのないようにしましょう。