国外財産調書の提出状況

posted by 2020.02.5

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 国税庁の発表によると2018年分の「国外財産調書」を提出した人は9961人(前年比+4.3%)、総額は3兆8965億円(同+6.3%)だったようです。
内容としては、株2兆1135億円、預金5771億円、建物4360億円となっており、移動させやすい株と預金が多くを占めています。

 

 国外財産調書は年末において5000万円超の国外財産を持つ人に提出義務があり、国外財産の種類、数量、価額等を記入して、翌年3月15日までに提出しなければなりません。

 この国外財産調書の提出には”アメとムチ”があります。
所得税や相続税の申告に漏れがあったとしても国外財産調書に記載があれば、過少申告加算税等が5%軽減されます。
所得税に関しては、自分で申告してるので分かるとして、相続税に関しては、被相続人は国外財産調書には載せていたけど相続人は気づかなかったということはあるかも知れません。
逆に国外財産調書を提出していない、あるいは記載していない財産に関連する所得税が漏れた場合には、過少申告加算税等が5%上乗せされます。
2018年の場合、”アメ”の適用を受けた人は194人、”ムチ”の適用を受けた人は245人で、調査があって初めて加算税の問題が出てくるのでまだ人数としては少ないです。

 導入当初は”アメとムチ”はこの2つでしたが、その後、不提出や虚偽記載に関して、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という重めの”ムチ”が追加されています。

 

 国外財産調書は年末時点の財産を記載するものでしたが、2020年分以降は、海外にある銀行預金の入出金や不動産の賃貸借などの取引記録の保管も求められます。
ストックだけでは税逃れを把握できないので、フローも把握するのが目的ですが、現時点では提出する書類に書くようなものではなく、保管しておくだけです。
保管は義務ではありませんが、のちの税務調査等で提出を求められた時に資料として示せないと過少申告加算税等が5%さらに上乗せされることになります。

 

 海外取引や海外財産は税務署としても重点項目なので今後も厳しくなる方向が予想されます。