イデコの退職所得控除

posted by 2020.10.8

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 前回の続きで退職金を2回もらう場合の調整計算について見ていきます。
イメージとしては60歳で勤務先から退職金を受け取り、65歳でイデコの一時金を受け取るようなケースです。

 

<例1 退職所得控除の余りなし>
 60歳で勤務先から退職金1000万円受け取り(勤続期間20年)
 65歳でイデコの一時金500万円受け取り(加入期間10年)

① 退職金受け取り
 1000万円-(40万円×20年)=200万円
 200万円×1/2×15%=15万円(住民税含む)

② イデコ受け取り
・勤続期間の重複:5年間(勤務先の最後の5年とイデコの前半5年)
・重複期間の調整:40万円×5年間=200万円
イデコでの退職所得控除:40万円×10年間(加入期間)=400万円
・調整後の退職所得控除 :400万円-200万円200万円

500万円-200万円=300万円
300万円×1/2×15%=22.5万円(住民税含む)

 イデコの加入期間は10年ありますが、60歳の時点で使った年数分を除いて計算します。
60歳での退職金受け取り時に退職所得控除を使い切っている場合は比較的計算は簡単です。

 

<例2 退職所得控除の余りあり>
 60歳で勤務先から退職金700万円受け取り(勤続期間20年)
 65歳でイデコの一時金500万円受け取り(加入期間10年)

① 退職金受け取り
 700万円-(40万円×20年)=▲100万円 税額なし

② イデコ受け取り
・みなし勤続期間:700万円÷40万円=17年(1年未満切捨て)
・みなし重複期間:2年間(重複している5年-余りの3年)
・重複期間の調整:40万円×2年間=80万円
・イデコでの退職所得控除:40万円×10年間(加入期間)=400万円
・調整後の退職所得控除 :400万円-80万円320万円

500万円-320万円=180万円
180万円×1/2×15%=13.5万円(住民税含む)

 勤続期間と加入期間の重なりは5年ありますが、退職所得控除の余りがあればその部分は重複していないと考えるため、控除できる金額は増えます。
式で考えると複雑ですが、図表を書いて順番に計算していくとさほど複雑ではありません。

 

 イデコを受け取る際の退職金課税は、勤務先退職時に何年働いていくら受け取っているかにも影響を受けるのでケースバイケースですが、税負担が発生する可能性があることは考慮しておきましょう。

 

 なお、イデコを一時金ではなく年金方式、あるいは一時金+年金の組み合わせで受け取ることもできます。
退職金課税で優遇が受けられる部分までを一時金で受け取って、残りを年金で受け取るという”おいしいとこ取り”も可能です。

 年金に対する課税は今年改正もあったことから次回確認します。