前回の続きで、配偶者居住権の税務について見ていきます。
民法では、配偶者居住権は建物の権利から分離するものですが、相続税評価をする上では建物だけでなく、その敷地も制約を受けるため、土地も建物もその分評価が下がります。
1.建物の評価
① 考え方
配偶者が今後住む年数と残りの耐用年数から、住み終わった時点の時価を計算し、運用利回りで今の価値に割り戻して評価します。
② 建物所有権の評価額
配偶者居住権のついた建物の評価額を計算し、その差額として配偶者居住権を計算します。
<算式>
建物の時価A×(残存耐用年数B-配偶者居住権の存続年数C)/残存耐用年数B×複利現価率D
・建物の時価A:固定資産税評価額
・残存耐用年数B:建物の耐用年数を1.5倍して、使った年数を引きます。耐用年数は事業用を前提として計算されているため、自宅の場合は事業用より長く使えることから税法上1.5倍します。木造だと33年になります。
・配偶者居住権の存続年数C:10年や終身など自由に設定できます。終身の場合は平均余命を使います。
・複利現価率D:配偶者居住権の存続年数に応じた民法の法定利率(3%)による複利現価率。式の前半で配偶者居住後の時価を出しているので、今の価値に換算するため、運用金利で割り戻しします。
(例)
・配偶者(75歳)が居住権、長男が所有権を相続。
・A:建物の固定資産税評価額1000万円
・B:木造33年のうち13年経過し、残り20年
・C:配偶者居住権の存続期間は終身、75歳女性の平均余命は15年
・D:15年、3%の複利現価率は0.642
★ 建物所有権の評価額
1000万円✖(20年-15年)/20年✖0.642=160.5万円
③ 配偶者居住権の評価額
建物の時価から②の建物所有権分を引きます。例の数字だと下記のようになります。
1000万円-160.5万円=839.5万円
長くなったので、土地評価については次回へ続きます。