美術工芸品の相続税

posted by 2017.08.28

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 美術工芸品についての相続税の納税猶予創設を文化庁が検討、という報道がありました。

 ”納税猶予”ということは”非課税””免税”ではなく条件付きで納税が猶予されることになります。
相続税の納税猶予といえば農地と非上場株式があります。
農地は農業を継続することが条件、非上場株式は事業を継続することが条件となっています。
美術工芸品の場合は博物館や美術館に預けて公開することが条件として想定されています。

 国宝を含む重要文化財である美術工芸品は全国で10654件ありますが、そのうち個人所有のものは702件
現状では美術工芸品を相続した場合、市場価値で評価され相続税がかかるので納税資金がなければ売るしかなく、刀剣や書跡・典籍を中心とする約100件は相続時の売却などで所在不明になっているそうです。
こういったものを納税猶予で国が受け入れて専門施設での適切な管理と公開を促すのが狙いです。

 

 ちなみに重要文化財である美術工芸品のうち、6割は社寺が所有しています。
宗教法人であれば法人なので相続税はかかりませんし、住職や神主が個人で所有している場合でも「宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの」は非課税なので相続税はかかりません。
また非課税財産で言うと「国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの」という項目もありますので一般の個人が相続した美術工芸品については寄付という方法もあります。

 ただ相続人としては寄付や売却をせず所有し続けたいという方もおられるでしょうし、文化財保護と活用のために納税猶予という選択肢もぜひ増やしてもらいたいところです。