年末調整リターンズ2020 ② 改正項目

posted by 2020.11.12

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 前回の続きで年末調整の改正項目の後半を見ていきます。

 

3.所得金額調整控除の導入(子どもと特別障害者等の扶養控除)

① 趣旨
 前回、給与所得控除の改正を確認しましたが、令和2年から給与年収850万円超1000万円以下の方は増税されています。

例:年収900万円
・従来:給与所得控除210万円
・改正:給与所得控除195万円(うち10万円は一律引き下げ分)

 その増税された方のうち、家族内に特別障害者がいる方と子育てしている家庭を救済するための措置として所得金額調整控除が創設されました。

 

② 要件
・給与の収入金額が850万円超
・次の4つのいずかに該当
 イ.本人が特別障害者
 ロ.同一生計配偶者が特別障害者
 ハ.扶養親族が特別障害者
 ニ.23歳未満の扶養親族がいる(平成10年1月2日以後生)

 

③ 控除額
(給与の収入金額※-850万円)×10%=最大15万円

※給与の収入金額が1000万円を超える場合には1000万円

 先ほどの900万円の例で計算すると5万円になります。
給与所得控除は改正で15万円減りましたが、そのうち10万円は全員一律で下がった分で、基礎控除の10万円アップでカバーされており、増税分の残り5万円はこの調整控除で消えることになります。

 

④ 申告書
 「給与所得の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という冗談のように長い名前の申告書が今年からできています。
この申告書の下の部分が「所得金額調整控除」の計算欄です。

 扶養親族等の欄は1人分しかありませんが、子どもが2人いる場合はどう書けばいいのか?という質問を早速いただきました。
ここは該当者が1人いれば適用があるので全員書く必要はありません。どなたか1人を書いて下さい。

 なお、給与が850万円以下であればこの欄の記入の必要はありません。

 

4.ひとり親控除の新設

① 趣旨
 従来、離婚や死別の場合には寡婦(夫)控除がありましたが、そもそも未婚の場合は控除がありませんでした。
そこで未婚であっても控除が受けられる「ひとり親控除」が創設され、同時に従来の寡婦(夫)控除に関しても”事実婚”を除外する改正が行われました。

 

② ひとり親控除(35万円)の要件
・生計を一にする子※を有する
・合計所得金額が500万円以下(給与のみなら約677万円)
・事実婚でない(住民票に未届の夫または妻の記載あり)

※総所得金額、退職所得金額、山林所得金額の合計が48万円以下。給与のみなら103万円以下。

 

③ 寡婦(夫)控除の見直し
・事実婚であれば控除消滅
・従来、離婚の場合の寡婦の要件は「所得500万円以下又は生計一の子を有する」だったので所得500万円超でも子がいれば適用がありましたが、改正で所得要件も追加
・特別の寡婦(35万円)は、要件がほぼ同じ「ひとり親控除」へ吸収
・寡夫も要件がほぼ同じ「ひとり親控除」へ吸収(控除額は8万円増加)

 

 改正により”寡婦”と”寡夫”の要件が統一されたことになります。
未婚の親が改正で救済されただけでなく、従来の寡婦(夫)控除も微妙に変わっているので一から丁寧に判定するようにしましょう。