ドラマで「債権放棄」という言葉が飛び交っていたので取り上げてみます。
大手銀行が航空会社への貸付金を政府からの要請で債権放棄する、という事例はちょっと特殊ですが、考え方としては一般企業の場合も同じです。
1.原則的考え方
① 法人税
<債権放棄を受けた側>
借金を棒引きする、あるいは売掛金を免除するといった債権放棄は普通に商売している時には行われることはありません。
それだけに”利益供与”をしたことになり、債権放棄を受けた側では「雑収入」として法人税が課税されます。
<債権放棄をした側>
一方、債権放棄をした側で損失処理できるかというと、原則的には”利益供与”=”寄附金”となり、損金算入に制限があります。
寄附金は法人税回避のために濫用されるのを防ぐために損金算入枠が定められており、国や公的機関でない一般企業への寄附の場合、その枠は微々たるものです。
したがって債権放棄した側では、ほとんど損失処理できないというのが原則的な考え方に基づく処理になります。
② 消費税
<債権放棄を受けた側>
法人税では「雑収入」になりますが、収入に関して消費税が課税されるのは対価性がある場合に限られます。
対価性とは、サービス提供への対価、物品販売への対価、というように見返りがある状態を言います。
債権放棄の場合は、ただで利益供与を受けており、見返りと言える対価はありませんので消費税は”不課税”となります。
<債権放棄をした側>
債権放棄をした側では何を放棄したかで処理が変わります。
貸付金であれば、貸したお金が返ってこなかっただけで特に消費税が関連するところはありませんので消費税は”不課税”であり、控除できません。
これに対し、売掛金などの売上債権を放棄する場合は、売上の段階で消費税を課税されており、そこに含まれる消費税も国に納付済みです。
この売上債権が放棄により回収できなかったので、そこに含まれる消費税も回収できなかったことになります。
そこで債権放棄があった段階で、消費税を控除できます。
なお、この場合の消費税率は売上げが発生した当時の税率になります。
ここまでは原則的な考え方ですが、実際には様々なケースがあります。
例えば子会社への債権放棄、同族会社の役員が自社への債権を放棄する場合などがあり、税目も法人税、消費税だけでなく、相続税や贈与税も関連してきます。
(つづく)