債権放棄と税金 ② 貸倒損失

posted by 2020.09.1

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 前回の続きで債権放棄と税金との関係について見ていきます。
債権放棄をした側では、利益供与として原則的には寄附金として損金算入が制限されますが、損失処理できるケースもあります。
損失処理に関しては、相手方が第三者なのか、関連会社なのかによって取扱いが変わります。

 

1.第三者

(法人税基本通達9-6-1抜粋)

債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額については貸倒れとして損金の額に算入する

 

 相手方が第三者なので、債権の回収可能性を充分に検討した上で、やむなく債権放棄を行うというのが通常です。

 損失処理できるかどうかのポイントは次の点です。

・債務超過が相当期間継続の”相当期間”はケースバイケースですが、3~5年が目安。

・債権放棄は書面で明らかにする必要があり、少なくとも内容証明郵便であることが望ましい。

 

2.関連会社

(法人税基本通達9-4-2抜粋)

法人がその子会社等に対して債権放棄等をした場合において、業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等相当な理由があると認められるときは、その経済的利益の額は寄附金の額に該当しないものとする。

 

 子会社を再建等する場合、親会社として社会的に責任を取らざるを得ない状況もあるため、相当な理由があれば損失処理できることとされています。

 損失処理できるかどうかのポイントは次の点です。

・合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性(過剰支援でないか)、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等(特定の者に偏っていないか)について、個々の事例に応じて総合的に判断する。

・利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として合理的なものと取り扱う。

・子会社等の倒産危機、または経営不振を放置すれば親会社が今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかである

 関連会社のうち、特に海外子会社に対する債権放棄等は注意が必要です。
海外子会社への支援は金額が大きくなりがちで、寄附金とされた場合の損金算入枠がゼロなので、国内での債権放棄に比べてより慎重な判断が求められます。

 

 昨日の記事の冒頭で書いた「大手銀行が航空会社への貸付金を放棄する」ケースは、そもそも第三者間の取引である上に、合理的な再建計画に基づいて実施されるものであるため、寄附金とされることなく損金算入することができます。

(つづく)