過大な役員報酬②

posted by 2019.04.18

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 役員報酬が多過ぎるかどうかというのは判定が難しいところですが、最近の判例を使って考え方を整理しておきます。

 

 規定上は、下記の内容に照らし、相当額を超える部分は損金の額に算入しないとされています。

・役員の職務の内容

・その法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況

・同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況

 

 泡盛を製造する会社の事件ではこの基準に沿って判断がされました。

<指標>

・過去4~6年の業績の推移。

・その間の従業員給料と役員報酬の推移。

・同業類似法人9社と役員報酬比較。

 

<推移>

・業績は概ね一定、やや下落傾向。従業員給料も業績と似た動き。

・役員報酬は業績と比例せずに2倍、3倍、4倍と増加。

・同業類似法人の最高額よりも役員報酬が高い、しかも業績で負けている。

 

<国税庁の主張>

・同業類似法人の最高額ではなく平均額を比較対象にすべき。

 

<納税者の主張>

・売上と役員報酬に直接の関連性はないし、類似法人の抽出方法も納得いかない。

・役員の能力や経常利益率も判断材料にすべき。

・類似法人の役員報酬を知る方法がない。

 

<結論>

・業績や従業員給料との相関性がなく高すぎる。

・自社よりも業績がいい会社の役員報酬最高額を超える部分は過大。

・役員の能力など個別事情は基準が曖昧で判断材料にならない。

・他社の状況は各種統計や書籍等から推定可能。

 

 役員の貢献度など定性的な部分で高いか安いかを判断するのは難しいですが、定量的に数字で詰められると反論が難しいところがあります。

 逆に言うと、税務署としてもここまで手をかけないと「高すぎる」と認定できないので、よほど高いとかよほど不自然でない限り指摘は難しいということになります。

 

 税務署として指摘しやすいのは次のようなケースです。

・海外にいる、学生、会社に机もない、他社と兼務など役員として業務を行なうのが難しい状況で、している形跡もない。

・比較対象が自社内にある。例えば役員同士での多寡や役員報酬の急激な変動。

 

 結論としてまとめるのが難しいのですが、通常の調査レベルでは業績、従業員や他役員とのバランスなどを考慮して”常識的”な判断をしていくことになります。