一般庶民には「103万円の壁」が大きな問題ですが、超富裕層にとっては「1億円の壁」が大きな問題です。
「103万円の壁」は超えると本人に税金がかかったり、扶養から外れるというものですが、「1億円の壁」は逆で超えると税金が減ります。
所得税は5%から始まって最高45%に上がっていく超過累進税率の仕組みで税金は増える一方のはずなのになぜこんなことが起こるのでしょう?
カギは税金の”負担率”です。
税金の支払額ではなく、所得に対して何%税金を負担しているかで見ると、1億円までは上がり続けて28.8%に到達しますが、1億円を超えると下がり始め、10億円では22.6%まで低下します。
なぜ下がるかというと超富裕層は株の配当及び売却、不動産の売却が多いのが1つの要因です。
これらは分離課税であるため、所得税は15%で済み、総合課税の45%を大きく下回ります。
この矛盾を改善するために令和5年度税制改正に「ミニマムタックス」が盛り込まれ、今年2025年から導入されます。
<概要>
・年間所得が30億円を超える人の税率を22.5%まで引き上げる制度
・金融所得のみなら10億円超で追加税額発生
<算式>
・(合計所得金額-3.3億円)×22.5%-通常の所得税額=追加納税額
例:10億円の株売却→75万円の追加
30億円の株売却→1.5億円の追加
ミニマムタックスで最近話題になっているのが某寿司チェーンの創業家株主です。
去年のうちに個人から資産管理会社へ株を売却したため、ミニマムタックスの適用外で、今後の個人への配当も減ります。
売却自体は合法的な節税なので特に問題はありません(約5億円の節税効果)。
ただ、売却が株主優待廃止で株価が下落したタイミングで行われ、その後株主優待がすぐ復活して株価が上昇していることから意図的ではないかという目で投資家から見られています。
今後もミニマムタックスを回避する動きは増えてくるかも知れません。