ストックオプションと課税 ③

posted by 2023.06.1

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 前回、税制適格ストックオプションについて確認しましたが、要件が厳しく使いづらい面がありました。

 例えば株主総会での決議事項が多いことや価格算定ルールが不明瞭なことなどが挙げられますが、交付のタイミングによる差もありました。

 成長初期に交付したストックオプションは行使価格と売却価格の差が大きいことから従業員のメリットが大きくなりますが、上場直前の段階で交付したストックオプションは株価がある程度上がってしまっているため、行使価格と売却価格の差が小さくなり、メリットは縮小します。

 そこで成長初期に交付したストックオプションを信託に預けて”冷凍保存”しておいて、後で入社した社員にも交付できるようにしたのが「信託型」です。

 

 スタートアップ企業での使いやすさから信託型は年々増えていたのですが、国税庁は今回次のような見解を発表しています。

・今ルールを変えたのではなく元々給与所得。問い合わせには給与所得と答えていた。

・事前に譲渡所得でOKというお墨付きは出していない。

役員や従業員が無償で権利を取得している点は従来型と同じなので給与所得(最高税率55%)

・権利行使時に給与が確定するので会社は源泉徴収が必要

・源泉所得税の一括納付が困難であれば1年以内の分割納付の制度もある。

・今後は株価算定ルールを明確にするなど使い勝手を向上させる。

 

 今後のことはともかくとして、すでに行使して売却しているケースもありますし、退職していて源泉徴収が難しいケースもあります。
追徴税額は200億円にも上ると言われていますが、会社としても源泉徴収税額を払ったあと、従業員に請求するのかそのまま会社が肩代わりしたままにするのかといった対応も分かれてきそうです。

 会社が今回の取扱いをひっくり返すには裁判を起こして勝つしかなく、コストも労力も大きくなります。
信託型を導入している会社では、税制適格型への移行や有償型への変更を検討している会社もあるようです。

 

 2022年11月に政府から発表された「スタートアップ5か年計画」の中では税制適格ストックオプションの要件を緩和することも盛り込まれているだけに会社の成長に水を差さないように早急な見直しが期待されます。