インボイス時代の免税事業者

posted by 2022.04.19

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 令和5年10月1日から消費税のインボイス制度が始まります。

 

 仕入れや経費の支払い先がインボイス登録事業者であれば支払った側で消費税の仕入税額控除ができますが、インボイス登録事業者でない場合(≒免税事業者)であれば仕入税額控除ができず、支払う側が負担する消費税は増えます。

 免税のままだと取引上不利になるため、免税事業者の多くがインボイス登録をして課税事業者になると考えられていますが、「免税事業者のままではダメですか?」というご質問も時々いただきます。

 

 インボイス登録せず免税事業者のままだとどうなるのでしょうか?

 

Q1.消費税を請求してOK?

A1
 値付けは自由なので消費税分を請求してもOKです。
取引先からすると「インボイス登録してないということは消費税を払ってないのだから消費税が乗ってるのはおかしい。その分安くして欲しい」という声は出るかも知れませんが、消費税の請求自体がダメだというルールはありません。

 但し誤解を招かないように「消費税額」ではなく「消費税相当額」という表示にするべきという見解が出ています。
また無用なトラブルを避けるために「税込」で表示した方がいいかも知れません。

 なお、免税事業者からの仕入れであっても経過措置により6年間は一定額の控除が可能です。
・令和5年10月1日~令和8年9月30日:80%
・令和8年10月1日~令和11年9月30日:50%

 

Q2.インボイス登録しないことを理由に値下げを要求されたが…

A2
 下請先等に対して優越する地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
下請けいじめ等を取り締まる公正取引委員会としてはインボイス導入に関して次のような考え方を取っています。

 

<インボイスの影響>

・相手方が消費者、免税事業者、簡易課税事業者であればそもそもインボイスを必要としないので取引に影響は生じないはず。

・医療や介護など消費税が非課税となるサービスを提供する事業者は従来から仕入税額控除できていないので、そのような事業者への売上であればインボイスの影響は受けないはず。

 

<見直しの是非>

・インボイスをきっかけに取引条件を見直すこと自体は違法ではない。
 ただし一方的な通告や形式的な交渉など優越的地位の濫用にならないように留意した上で合意することが必要。

 

<交渉術>

免税事業者は消費税を納付しないが仕入や経費の際に消費税を負担しているので、現状と価格を変えなかったとしても10%丸儲けしてるわけではない。

・自社が負担する消費税も踏まえて、消費税10%まるまる値下げされないように取引先と交渉すべき。

 

 公正取引委員会のコメントは若干奥歯に物がはさまったというか、建前論的な部分はありますが「交渉自体はOK、ただし一方的にせずそれぞれの負担を考慮して落としどころを探るように」という考え方のようです。