相続税の税務調査 ④

posted by 2021.08.26

rmoney_rich_ase

 相続税の税務調査最終回は順番が逆になりましたが、「こんな申告は調査に来やすい」というポイントを見ていきます。

 

① 財産が多い

 いくら以上の財産があれば調査に来る、という明確な基準はありません。
近年国税庁は富裕層への調査を強化していますが、その情報収集の一環として財産債務調書の提出が義務付けられています。
財産債務調書は財産3億円以上または有価証券で1億円以上で提出義務があるため、このあたりも富裕層の1つの基準と言えます。
実際にはもう少し低い2億円ぐらいでも調査に来ているようにも思います。
なお、小規模宅地の評価減や配偶者控除など特例を使って税額がゼロになる規模の場合は、少々漏れがあっても修正税額が発生しないだけに調査の可能性は低くなります。

 

② 預金が少ない

 ①と逆のようにも聞こえますが、収入の割には預金が少ないという意味です。
税務署は確定申告の内容、源泉徴収票、時期の近い不動産売却などから預金がどれだけ残るか推定します。
その金額より相続での申告額が明らかに少ないと贈与や名義預金があるのではないかといったことを想定します。
また生活費をはるかに超える多額の出金がある場合には調査でその用途について確認されます。

 

③ 家族の預金が多い

 ②の裏返しで家族に預金が流れているのではという想定をします。
税務署は亡くなった被相続人だけでなく、家族の預金残高や動きも最長10年分チェックしています。
明確に資金移動がある場合はもちろん贈与ですが、小口で渡してじわじわ増えている場合も時系列で細かく分析しています。
贈与の申告も収入もないのに未成年の子どもや孫に多額の預金があると、名義預金や贈与があるのではという想定をします。

 

④ 海外財産がある

 富裕層への調査強化とも関連しますが、海外財産についても注目しています。
海外の税務当局との情報交換や海外入出金の支払調書などから情報収集して、海外に財産を逃がしていないか調べます。
意図的な場合は別として、海外財産は複雑なので相続人が把握しきれないという面もあります。

 

⑤ 借入金とのバランスが不自然

 相続債務に多額の借入金があるのに、それに見合う不動産などが財産として計上されていない場合には財産が漏れている可能性を考えます。

 

 上記の項目に共通して登場するのは「現預金」です。
登記簿に載る不動産や支払調書の出る株式や保険ははっきりしているので、漏れも少ないし隠しようもありません。
それに対し、現預金は動かしたり名義を変えたりということが可能なので、現預金の残高や動きに疑念があるとたとえ総額が1億円以下であっても調査には来ます。

 

 申告の際にはしっかり調べて漏れのないようにしましょう。
時期の近い明らかな名義預金などはどうせ気づかれるので、真面目に計上する方が印象もいいですし、調査には来にくくなります。