減資の効果 ③ 均等割

posted by 2021.03.17

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 前回、減資して資本金が1億円以下になった場合の税務メリットについて確認しましたが、減資しても税負担が変わらないものもあります。

 

 内容に入る前に用語の確認をしておきます。
「資本金」「資本金等」は一字違いですが、意味は大きく異なります。

「資本金」は決算書や登記簿謄本に出ているので一目瞭然です。
ただし「資本金=株主の出資額」とは限りません。
株主の出資額のうち、半分以上は資本金にしなければなりませんが、残りは「資本準備金」とすることができます。
では何が違うかというと、資本金を減らすには債権者保護や官報公告など複雑な手続きがあるのに対し、資本準備金を減らすにはそこまでは不要です。
この資本準備金までを含めた概念が「資本金等」です。

 

 税金に関しては、単純に「資本金だけ」で決まるものと「資本金等」で決まるものとがあります。
前回の資本金1億円以下の中小企業優遇は単純に「資本金だけ」で判断しています。そのため、減資した場合に税負担が減ります。

 これに対し「資本金等」で判断するものは減資しても税負担が減るとは限りません。
その代表的な例としては次の2つがあります。

<地方税の均等割>
 赤字でも発生する都道府県や市町村の均等割は企業規模によって決まりますが、この場合「資本金」ではなく「資本金等」がいくらかで変わってきます。

例:大阪市の社員50人超の会社

① 資本金9000万円、資本準備金0

 均等割=大阪府7.5万円+大阪市15万円=22.5万円

② 資本金9000万円、資本準備金2000万円

 均等割=大阪府26万円+大阪市40万円=66万円

3倍近くになるので毎年のことだと影響は大きいですし、複数の自治体に事業所がある場合はさらに影響が大きくなります。

 なお、以前は「資本金+資本剰余金」で均等割を判定していましたが、改正があり、平成27年4月1日以後開始事業年度については次のうち大きい方の金額を採用することとされました。

 ① 資本金+資本剰余金
 ② 法人税法の資本金等+無償増資-無償減資による欠損填補
 

 

<外形標準課税の資本割>
 外形標準課税の適用の有無は「資本金だけ」で判定しますが、実際に税額を計算する際の資本割は「資本金等」を使います。

 

「資本金等」については厳密に見ていくと次のような調整項目もあります。

<法人税法>
・無償減資は影響なし、有償減資はマイナスする。
・自己株式の取得額はマイナス(ただし、みなし配当分は利益剰余金からマイナス)
・利益から資本への組入額は含まず。

<地方税法>
・基本は法人法と同じ
・無償減資や無償増資も考慮する(平成27年改正)

 

 合併、自己株式、増資、配当など資本に関する取引がある場合には、「資本金等」も変化するため、税負担への影響を見る場合は丁寧に判定していく必要があります。