相続登記の義務化

posted by 2021.02.12

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 相続税の申告期限は通常亡くなってから10か月以内です。
その申告期限に向けて、相続税の計算、遺産分割協議、納付の準備を進めていきます。
その流れで、登記に関しては期限がないので10か月以内でなくてもいいことをお客様に説明すると「えっそうなんですか!?」という反応が返ってくることが多いです。

 売却する場合や担保に入れる場合は、正しく相続登記されている必要がありますが、必要に迫られていない不動産に関しては、相続登記されることなく放置されることがあります。
そのことが所有者不明土地や建物の発生につながり、災害時の復興や有効活用の妨げとなっています。
所有者不明土地は、現状で九州本島を超える410万ヘクタールに上り、2040年には北海道の面積を超えるという試算もあります。

 こういった事情を踏まえて、相続登記の義務化が法制審議会で検討されていて、2023年度も義務化される方向です。

 

 国会審議はこれからですが、次のような内容が改正案として答申されています。

<義務化の内容>

・相続から3年以内に登記申請しなければ10万円以下の罰金

・10年間未分割なら法定割合で分割

・住所や氏名変更は2年以内に申請しなければ5万円以下の罰金

・法人の本店移転も同様に2年以内に申請しなければ5万円以下の罰金

 

<手続きの円滑化>

・行政は住基ネットで死亡情報を登記

・死亡者名義不動産の一覧を行政が発行

・海外居住者は国内連絡先を登記簿に記載

 

<有効活用>

・建物や土壌汚染がなければ国庫に返納可能(10年分の管理費支払が必要)

・公告をすれば他の共有者で管理や変更が可能

・補修や短期の賃貸借の決定が共有者の過半数で可能

・裁判所の許可で管理人を選べば売却可能(所有者不明分の代金は供託)

 

<適用時期>

・法施行後(2023年度予定)に新たに発生する相続から

・それ以前のものは猶予期間を定めて適用

 

 所有者不明土地による経済損失も大きいだけに、実効性の高い制度になることが期待されます。