留保金課税とは

posted by 2020.10.16

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 会計検査院が留保金課税が適切に行われていないことを指摘しているというニュースが出ていました。

 留保金課税とは、会社が利益を貯め込んで税負担を逃れることを防ぐための制度ですが、中小企業は資金調達能力が弱く、むしろ内部留保を充実させるべきなので、この制度で追加的な税金がかからないよう事実上対象から外れています。
 ところが会計検査院が調べたところ、約400社が十分経営体力があるのに留保金課税(税収で315億円)を免れているとして財務省に見直しを求めたようです。
この400社が多いか少ないかはともかくとして、よく増税のネタとして出てくる内容ですので確認しておきます。

 

<概要>
 上位3グループの株主で過半数の株を持つ会社を『同族会社』と言い、筆頭株主グループだけで過半数の株を持つ会社を『特定同族会社』と言います。

 上場企業など多くの株主がいる会社では、利益が出れば配当をするのが普通ですが、同族会社ではあまり配当は行われていません。
税務上のメリットがないのがその理由で、配当は税引後利益から行うため法人税が減らず、受け取った配当にも普通に所得税がかかるためです。

 そこで特定同族会社が社内に貯め込んだお金に10~20%の追加的な法人税を掛けようというのが留保金課税です。

 

<計算方法>

(留保金額-留保控除額)×追加税率

留保金額:所得-社外流出(配当や役員賞与)-法人税等

留保控除額:次のうち多い金額

① 所得基準額:所得等の金額✕40%
② 定額基準額:2000万円
③ 利益積立金基準額:期末資本金の25%-利益積立金

追加税率:~3000万円は10%、3000万円~1億円は15%、1億円超は20%

 

<適用対象外>
・資本金1億円

・ただし、資本金の額が5億円以上の法人等の100%子会社は中小企業とは言えないため、適用対象となります。

 

 現状では資本金1億円以下という形式基準で外れる会社が多いので、多額の利益が出て配当していなくても、留保金課税される会社は全体の1%もありません。
以前は対象外とする要件に、設立後10年以内や自己資本比率50%以下という要件がついていた時期もあり、今後何らかの条件が追加される可能性もあります。

 会社にお金を貯め込まず、配当や給料や設備投資にまわして欲しいという趣旨は分かるのですが、中小企業の成長意欲を削ぐような増税にはして欲しくないところです。