税務署による預金調査

posted by 2020.09.30

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 ドラマの中で国税庁が銀行で政治家の過去の取引を調べる場面がありました。
ドラマチック過ぎる嫌いはありますが、実際に調べることは可能です。

 

 国税通則法の中で、税務職員の質問検査権について規定されており、税務調査をしていて必要があるときは取引先や銀行に対して質問したり、資料の提出を求めたりすることができます。
いわゆる”反面調査”というもので、どこまで調べるかは税務職員の合理的な裁量に委ねられています。
銀行取引に関しては、銀行側で10年分の履歴が残されているため、照会をかけることで過去の動きを知ることができます。
法人税所得税の調査で個別の取引のお金の流れを追っていくこともありますし、相続税の調査で本人だけでなく家族も含めて過去10年間の全取引を入手してお金の流れを調べていることもあります。

 

 この銀行取引に対する反面調査と分析が今後変わっていきそうです。
現状では銀行に出向いてその場で見るか、郵送の場合は調査対象者の情報を記入した照会文書を出力して、返信用封筒を同封し銀行別に送付しています。
そして入手した情報を手入力で打ち込んでデータ化して内容を分析しています。
このような銀行への照会は年間600万件あると言われ、税務署も手間ですが、対応する銀行においても手作業が多く膨大な負担となっています。

 

 そこで今後の電子化を目指して、今秋に東京国税局と仙台国税局の管内の税務署において、オンラインで照会と回答を行う実証実験が行われます。
2か月程度実証実験を行って、コスト削減や事務フローの省力化の効果を検証した上で、令和3年以降に全国展開することが検討されています。

 

 納税者としては特に変化はありませんが、税務調査が合理化されることで調査期間は短くなる可能性はあります。
従来の調査でも「銀行調査中です」という理由で1~2か月待たされることもあったのでそういったことは解消されるかも知れません。

 税務署はメールどころかFAXも使わないアナログな役所でしたが、今後はデジタル化が推進されていきそうです。
ただ今回の銀行取引のデータ化においても民間業者が介在するようなので、データの取扱いに関しては十分に注意すると共に、質問検査権の濫用にもつながらないよう慎重な取扱いをして欲しいところです。