従業員による事業承継 ⑤

posted by 2026.03.3

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 従業員による事業承継の最終回は「事業承継税制」を取り上げます。

 

 事業承継税制中小企業の円滑な事業承継を目的に2009年に導入されました。
株式を相続すると多額の相続税がかかり、承継の妨げとなっていたことから、事業継続など一定要件を満たしていれば、相続税や贈与税が猶予されることとなりました。
ただし制度の利用が低調であったため、2018年に要件を大幅に緩和した「特例措置」が期間限定で導入されました(2027年まで)

 

 当初の事業承継税制は親子など親族間での承継のみが対象でしたが、特例措置ができた時に親族以外も利用が可能になりました。
特例措置の要件は、後継者が親族でも親族以外でも同じですが、次のような注意点があります。

 

① 役員の任期

 以前は株を贈与する時点で、3年以上役員である必要がありましたが、改正があり、贈与直前に役員であればOKということになりました(2025年以降の贈与から)。
これにより、従業員から直前に役員昇格した場合や後継者を外部から招聘した場合にも適用を受けられることになりました。

 

② 株の承継方法

 親族であれば相続で自然な流れで株を引き継ぐことが可能ですが、親族以外であれば相続人でないため、贈与するか遺言を作成するかのいずれかを生前に実行しておく必要があります。

 

③ 相続人との関係

 相続人から見ると、先代が築き上げた会社が無償で他人のものになることになります。先代が決めたこととは言え、相続人との関係については承継後も配慮が必要でしょう。
また親族以外が株を相続すると2割加算の対象になるため、相続税の全体額が増加します。株を承継しない相続人の税額にも影響があるため、注意が必要です。

 

④ 個人保証

 税金の話ではありませんが、借入金がある場合、通常は社長が保証人となっています。
事業を承継した場合、後継社長が保証人になるケースが多いですが、少し前まで従業員だった後継者が多額の借入金の保証人になることは親族以上に荷が重いものです。

 個人保証を外せたら一番いいのですが、現実的にはそれも難しいので、銀行と協議しながらできるたけ負担の少ない承継を検討する必要があります。
具体的には借入金をできるだけ圧縮する、先代に代表権のない会長として残ってもらってしばらく保証人を続けるといった方法が考えられます。

 

 事業承継税制は、従業員が後継者になるケースでも少しは使いやすくなったため、選択肢の1つとして検討の余地はあります。
なお、制度選択の前提である「特例承継計画」の提出期限は改正により、令和8年3月31日から令和9年12月31日に延長される予定です。