前回の続きで法人をやめて個人事業にする”個人成り”のデメリットについて見ていきます。
<デメリット>
① 所得税、住民税の増加
・法人で給料を支給する場合には給与所得控除(サラリーマンの経費)を引けますが、個人事業にするとこれがなくなります。
・法人であれば家族を役員にすることで給料の分散ができますが、個人では給料と労働の対価性が厳密に問われるため、家族への給料が支給しづらくなります。結果として所得が一人に集中し、税率も上がるので税負担は増えます。
・法人で繰越欠損金が残っていたとしても当然個人に持っていくことはできません。
② 申告時期の固定化
・法人では決算月を自由に選べるため、閑散期や在庫が少ない時期に持っていくことができますが、個人は確定申告で3/15のみです。
③ 各種名義変更の手間
・法人で使っていた固定資産を個人でも使い続ける場合、売却した形を取る必要があります。それに伴い法人では消費税も発生します。
・従業員については一旦法人を退職して、個人に再就職したことになるため、雇用保険や社会保険の変更手続きが必要です。
・許認可のいる事業の場合はその変更もありますし、取引口座や賃貸借契約等の変更も当然必要です。
④ 法人の事後処理
・使わなくなった法人については、清算するか休眠させるかのいずれかになります。
・清算については解散登記、解散申告、清算結了登記、清算申告などの手続きが必要で、煩雑な上に費用(20万円~)もかかります。
・休眠は比較的簡単ですが、1年ごとに申告が必要で、登記は任期を伸ばしても10年に1度は残ります。
⑤ 法人化メリットの消失
・①で述べた節税メリットのほか、採用や取引面での信用メリット、法人と個人を区分することによる丼勘定の回避など法人化で得られたメリットはなくなります。
デメリットは一言でいうと法人化した際のメリットの裏返しになります。
固定資産なし、借入金なし、従業員なしという身軽な状態であれば比較的手続きは簡単ですが、そうでない場合はメリットよりデメリットの方が多いように思われます。
そのあたりを比較した上で”個人成り”についてはご検討下さい。