「スピンオフ」というと映画やドラマなんかで脇役を主役に据えて別のストーリーを作るイメージがありますが、会社の場合には、事業ごとに切り出して競争力を高めるためにスピンオフが行われることがあります。
例えば、アメリカのオークション大手イーベイは子会社にweb決済事業のペイパルを持っていましたが、2015年に分離しています。
これによりペイパルは親会社の競合他社にも営業をかけることができ、親会社としては従来の株主が維持されるので子会社が買収されるのを防ぐこともできます。
日本では、上場会社が子会社や自社事業の一部を切り出した場合に、株主には受け取った株式に関して配当課税、親会社には株式や固定資産の時価課税が行われるため、企業再編の障害になっていました。
そこで2017年に改正があり、一定要件を満たすスピンオフについても税制上の適格組織再編に該当するものとされ、株主及び親会社への課税が繰り延べられることとなりました。
制度ができたものの親会社には特にお金も入らず、利益も計上されないので適用がありませんでしたが、今年の10月にコシダカホールディングスの企業再編において初めて適用されました。
この事例では、本体でカラオケ事業、子会社でフィットネス事業をしていたのですが、フィットネス事業を切り出して、それぞれが上場企業として成長を目指すとされています。
投資家としても、フィットネス事業に成長性を感じていれば、新しい会社の株だけを買うことができます。
第1号が出たことで今後もスピンオフ税制の活用は増えていくかも知れません。
なお、非上場会社など50%超を所有するオーナー株主がいる場合には、従来からグループ内組織再編が使えるため、スピンオフ税制を使わなくても事業の切り出しは可能です。