前回まで不動産の売却収入から引ける取得費と譲渡費用の基本を取り上げましたが、今回はその応用編として『弁護士費用』について具体例で見ていきます。
<取得費>
〇 所有権の帰属に紛争が生じている資産を購入した場合の訴訟費用
(解決しないと取得できない)
〇 第三者が賃借している資産を購入した場合の立ち退かせる費用
(立ち退いてくれないと開発等できない)
✕ 完全な所有権移転後の権利侵害等に係る訴訟費用
(所有後のイチャモンは維持管理費)
<譲渡費用>
〇 譲渡契約の効力に関する紛争に係る費用
(契約が成立しないと売れない)
〇 借家人の立退きにかかる訴訟費用
(立ち退いてもらうのが売却の条件となるケース)
✕ 境界の紛争解決のための費用
(維持管理費の一環。譲渡と近くても直接の関連性はない)
✕ 売却に先立って遺産分割するための費用
(売却に関係なく遺産分割はするもの。譲渡益にも影響しない)
✕ 売却代金の取り立てにかかった費用
(契約のために直接必要でなく、契約後の話)
こうして見ていくと意外に範囲が狭いことが分かります。
買う時、売る時に直接関連するものでないと経費になりません。
よくあるのが境界紛争や遺産分割関係ですが、これらは売却の話がきっかけであっても経費になりません。
経費にできるかどうかの質問を支払っている側からいただくこともありますが、逆に弁護士さんから「どういう名目の請求なら経費になりますか?」と質問をいただくこともあります。
例えば次のような名目であれば経費になります。
・契約書作成、契約書チェック
・売買コンサルティング、売買に関する相談料
あまりに極端な割り振りは不自然ですが、上記のような仕事もしてもらってるはずなのでその部分を明確にしてもらえればOKです。
また支払いの時期ですが、売却のための費用であれば、売却より前に払うのが自然なのでできるだけ早く支払うことをお薦めします。