消費税は2年前の課税売上げが1000万円以下であれば免税ですが、相続があった場合、ある日突然消費税の課税事業者になることもあります。
どういうことかというと基準期間(2年前)の課税売上高の判定に相続で引き継いだ事業の売上も含めるためです。
<例>
相続人の2年前の課税売上高 500万円(不動産500万円)
被相続人の2年前の課税売上高 800万円(事業600万円、不動産200万円)
① 相続がない場合
500万円≦1000万円 ∴免税
② 相続で全事業を引き継いだ場合
500万円+800万円>1000万円 ∴課税
③ 相続で不動産業のみを引き継いだ場合
500万円+200万円≦1000万円 ∴免税
判定のルールとしては次にような点に注意が必要です。
・複数の事業がある場合は引き継いだ部分の課税売上げだけを使う。
・相続が1年のいつであっても2年前の売上まるまる1年分を使う。
・判定は1年分だが消費税の課税事業者になるのは相続があった日の翌日から。
・簡易課税など被相続人の選択していた特例はリセットされる。
最後のがちょっとやっかいです。
簡易課税はわざわざ選んだ特例であるため、自動的には引き継がれません。
簡易課税の選択は事業年度開始の日の前日、つまり個人の場合は前年12/31までに出さなければなりません。
ただ相続がある日突然やってくるので前年末に出すことは不可能です。
そこで相続があった年の年末までに簡易課税選択届出書を出せばその年から認められるという特例があります。
簡易課税は売上に業種ごとの率を掛けて消費税額を計算する方法ですが、不動産業は設備投資がない限り、正味で払う原則課税より簡易課税の方が有利になるケースが多いです。
ただし現実的な問題として12月に亡くなった場合は判断する時間が短いし、そもそもどこを相続するかなんてすぐに決まる話ではありません。
ちょっと酷な制度ではありますが、大きく税額が変わる(※)のでできるだけ相続があった年の年末までに判定するようにしましょう。
※年末までに簡易届を出せないとさらにもう1年原則課税になってしまいます。