前回の続きで市街地価格指数について見ていきます。
不動産を買った時の契約書等がなく取得費が不明なものについては、統計的な手法で推定せざるを得ないし、合理性があると平成12年の裁決で判断されましたが、否認されている事例もあります。
<否認事例>
事例はいくつかありますが、否認のポイントとなったのは次の点です。
・六大都市の市街地価格指数を使っているが、六大都市以外にある。
・売った土地が畑である(市街地価格指数は宅地しか出ていない)
・地目は宅地だが、宅地として利用されていない。
・「六大都市以外」の区分が広すぎるので、時価の推移を反映してるとは言えない。
・取得時の書類があるのに市街地価格指数より低いので使わなかった。
<注意点>
上記の否認事例を踏まえて注意すべき点は次の通りです。
・地域区分は当然合わせる。より条件が近いものを選ぶ。
・地目及び利用状況が宅地でない場合には使用しない。
・更正の請求での還付は目立つので当初申告で使用する。
・取得時の資料がある場合は使わない。
<根拠の補完>
市街地価格指数のみでは、個々の宅地の変動状況を直接的に反映していないため、次のような方法で根拠を補完すると合理性が強化されます。
・路線価(÷80%)、固定資産是評価額(÷70%)、公示価格などから逆算した価格と近い数字になっている。
・できるだけ取得費に近づく資料を集める(例:謄本の借入金情報、決済時の書類、通帳、メモ、近隣の売買実例など)。
・不動産鑑定士に鑑定評価や意見書を依頼する。
市街地価格指数は一定の合理性があるものの、むやみに使うと否認される可能性のある”取扱い注意”の方法です。
売買や取得の状況を十分検討の上、根拠の補完もしながら使うようにしましょう。