令和7年度税制改正大綱 ⑨ 所得税関係

posted by 2025.01.9

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 税制改正大綱の9回目は所得税関係です。

2回目に解説した「103万円の壁」対策以外で細かな改正が入っています。

 

1.年金控除額の減額

<背景>

 給料にはみなしの経費として給与所得控除があり、年金には公的年金等控除があります。
公的年金等控除の方が手厚いため、同じ収入でも「全額給料」の人と「給料+年金」の人では所得が異なり、年金が入る方が税金は安くなります。
この点に関して公平性の観点から指摘がされていました。

 また年金をもらいながら働くと年金がカットされる「在職老齢年金」という制度がありますが、定年延長や労働力確保の観点から上限が年々引き上げられています。
そうなるとより「給与+年金」の人が有利になることも今回の見直しの背景としてあります。

 

<改正内容>

・給与所得控除+公的年金等控除の合計の上限を280万円とする。

・給料と年金の合計が900万円ぐらいにならないと280万円は超えないので影響は限定的です。

 

<適用時期>

・令和8年度税制改正で決定

・在職老齢年金制度の見直しも考慮

 

2.エンジェル税制の拡充

<背景>

 特定のベンチャー企業に出資してその後売却した場合、20億円まで非課税とする制度がありますが、売却した年に次の株を買う必要がありました。
再投資期間が短く使い勝手が悪かったため、売却の翌年でも再投資できるよう、繰り戻し還付制度が創設されます。

 

<改正内容>

・エンジェル税制及び起業特例について、繰り戻し還付制度を創設し、売却の翌年に再投資した場合には売却年の所得税について還付を受けられるようにする。

※起業特例…設立時に出資してその後売却+再投資した場合に20億円の非課税枠が使える制度

・投資してすぐ翌年に売却した場合には非課税措置は使えず課税される。

 

<適用時期>

・令和8年以降の特定株式の取得(再投資)から

 

 所得税に関しては今回は小粒でしたが、高校生年代にも児童手当が出るようになったため、今後扶養控除やひとり親控除が見直される可能性があります。