不動産売却と原価 ② 契約書がない場合

posted by 2023.02.15

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 昨日の続きで売った不動産の買った時の契約書がない場合の取得費について見ていきます。

 

<建物>

① 賃貸物件

 減価償却しているはずなので、不動産所得の決算書の償却明細から購入額と直前の簿価が分かります。

 

② ローンがある場合

 登記簿謄本を見ると買った時にいくら借りたかが分かるので。あとは頭金の額が分かればおおよその購入額が分かります。
借入額は返済表や住宅ローン控除の書類でも確認できますし、通帳が残っていればお金の動きは分かります。

 

③ 何もない場合

 国税庁の冊子「譲渡所得の申告のしかた」の中に建物の標準的な建築価額表が載っています。
これは購入年ごと、建物の構造ごとに平均的な1㎡あたりの建築費を算出したもので、この数字に面積を掛けると買った時の金額が出ます。
例えば、平成元年購入の木造120㎡なら、123,100円×150㎡=14,772,000円となり、ここから減価償却費相当額を控除して現在の簿価を出します。
なお、令和4年分の冊子には昭和51年以降しか出ていませんが、古い冊子を検索すればそれ以前の情報も出てきます。

 

<土地>

① 建物の購入額が分かる場合

 建物の購入額が分かる場合は全体の購入額との差額が土地の購入額になります。
全体の購入額が分かって、土地と建物の内訳が分からない場合は合理的な方法(固定資産税評価の比率等)により按分します。

 

② 何もない場合

 一般財団法人日本不動産研究所が発表している『市街地価格指数』で計算する方法があります。
『市街地価格指数』とは土地の時価を指数で表現したもので、売却時と購入時の指数から購入額を逆算します。
例えば、売った時の指数が1.0、買った時の指数が0.8で、売却額が1000万円なら購入額は指数から逆算して800万円ということになります。

 この方法は税務署から正式に公表されている方法ではなく、平成12年の裁決事例の中で使われていた方法です。
そのため、原価が分かっているのに指数を都合よく使った場合や値動きが平均から大きく外れるような場合は否認されるリスクがあります。
税理士に相談の上、よく検討して使うようにしましょう。

 

 概算取得費の5%しか引けない場合、ほとんどが利益になってしまうため、諦めずに何かヒントになる情報を探すようにしましょう。
仮にメモしか残っていない場合であっても、上記の方法で検証してみて概ね合ってそうならその金額で計算するのもアリです。