競馬の外れ馬券問題再び

posted by 2022.06.21

sports_keiba

 お笑い芸人インスタントジョンソンのじゃいさんへの追徴課税で再び注目されている競馬の外れ馬券問題

 このテーマは最高裁で納税者が勝った事例があり、以前にも取り上げたことがありますが改めて整理しておきます。

 

1.原則:一時所得

① 一時所得とは
 
 営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得を言います。
例えば、懸賞の賞金、競馬等の払戻金、保険の満期、落とし物の謝礼など『たまたま』発生したものが該当します。

 

② 一時所得の計算

・年間総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額50万円

 直接要した金額だけが経費になるので競馬の場合は当たり馬券1枚の購入費だけとなり、今回の6400万円の高額配当に対しての経費は原則として1枚分100円のみです。

 

2.例外:雑所得

① 雑所得とは

 その名の通り、給与、事業、一時など他の9種類のどれにも該当しない所得を言います。例えば、公的年金、講演料、副業の儲けなどが該当します。

 

② 雑所得の計算

・年間総収入金額-必要経費

 一時所得に比べると経費の範囲が広く、競馬を副業と捉えると外れ馬券も含めて経費という考え方になります。

 

③ 最高裁判例(2017年)

「本件の競馬の馬券の払戻金については、馬券購入の態様や利益発生の状況等から雑所得に該当し、外れ馬券の購入費用は必要経費に該当する。」

 この解説だけでも1週間ぐらい書けそうですが結果として通達は次のように変わりました。

 

④ 所得税基本通達34-1(一時所得の例示)

「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき、又は予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って、偶然性の影響を減殺するために、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入するなど、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、年間を通じての収支で多額の利益を上げ、これらの事実により、回収率が馬券の当該購入行為の期間総体として100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。」

 長いので要約すると

・ソフトを使って全レース買うなど娯楽ではなく仕事としてやっている。
・継続的に儲けている。
・外れ馬券も自分で買ったことが立証できる。

ということになります。
そもそも毎年プラスの人なんて私の周りにはいませんが、通達上の要件は上記のようになっており狭き門です。

 

 今回のじゃいさんは5年間で億単位で馬券を買っていてちゃんとプラスになっているそうです。
あとはどの程度通達の要件に当てはまるのかが現状の判例をベースにした争点になります。
また自身の税金のことだけでなく、注目を集めることで厳し過ぎる経費の緩和につなげていきたいという思いもあるようで今後の展開が注目されます。