自己株式の意味

posted by 2019.05.22

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 上場企業自社株買いを発表すると株価が反発してニュースになったりします。
これは一言で言うと株が濃くなり、既存株主の株の値打ちが上がっているためです。
会社が余剰資金で市場から株式を買い上げることで発行済み株式が減り、1株当たりの利益や資産価値が向上するので、株式市場からは評価されます。

 

 では非上場企業の決算書に載っている自己株式は何を表わしているのでしょうか。
取得原因としては次のようなことが考えられます。

・従業員に株を持ってもらっていたが退職に伴い買い上げた。

・従業員持株会があったが解散したため買い戻した。

・取引先に株を持ってもらっていたが、取引関係の変化や相手先の資金繰りの都合などにより買い戻した。

・相続があった株主の相続人からの申し出により買い上げた。

・譲渡制限付株式で株主から申し出のあった買主を会社が承認しなかったため買い上げた。

 

 自己株式の取得はかつては禁止されていました。
実質的に資本の減少につながるため、会社の安定が損なわれ、債権者を害する恐れがあるというのがその理由ですが、企業再編での活用など経済界からの要望を受けて2001年の商法改正時に原則自由化されました。
そのため、上記のような様々な理由により、自己株式の取得が行なわれています。

 

 ただし好きなように買っていいかというとそういうわけではなく当然ルールや注意点があります。

・株主総会での決議が必要(譲渡株主を特定する場合は特別決議)。

・配当可能利益の範囲内。

・自己株式には議決権なし。

・税務上の同族株主や均等割などの判定も自己株式はないものとして計算する。

・取得した際には『資産』ではなく取得価額で『資本』のマイナス項目として表示する。

 

 取得した自己株式の活用や消却、売った側の処理など他にも論点がありますが、長くなるので次回へ続きます。