自己株式の活用または消却

posted by 2019.05.23

baisyu_m_and_a

 昨日の続きで自己株式の活用、消却について見ていきます。

 

 会社が取得した自己株式の使い道としては、企業再編の手段インセンティブとしての活用といったものがあります。

・企業再編の手段

M&Aや株式交換など企業再編を行なう際に、必要な資金を手許資金や借入による賄いますが、この対価を自己株式により行なうことで資金調達費用を抑えることができます。
当然、株式を対価にすると再編相手が自社の株主になるので、持株割合や配当政策など今後の対応を想定しておく必要はあります。

・インセンティブ

上場を目指す場合などに従業員に株を持ってもらうことによって、業績向上に向けたインセンティブにつながる効果が期待できます。
自己株式があれば、一から株を発行する場合に比べると手続き的にも簡易です。

 

 特に自己株式として活用する予定がない場合は自己株式を消却(”償却”ではありません)することも可能です。

 会計的には「その他の資本剰余金」を減らす手続きになり、税務的には取得時に資本が減ったと考えて処理済みであるため、改めて資本金等の額が増減することはありません。

 ただし実際には自己株式を消却することはあまりありません。
その理由として以下のような点があります。

資本金が減るわけでも税金が減るわけでもない。

・それどころか消却すると発行済み株式数が減るので登記コストがかかる。

・置いておけば資金調達、企業再編、インセンティブとしての活用などに使えるかも知れない。

 

 ここまで自己株式を取得する会社側の取扱いを見てきましたが、次回は逆の会社に売る株主の処理を見ていきます。