前回の続きでほっといた場合の相続税への影響のうち、小規模宅地等の特例について見ていきます。
3.自宅が財産のほとんど
自宅については小規模宅等の特例が使えれば評価額が2割まで下がるため、自宅が財産の多くを占めるのであれば相続税はかからないケースが多いです。
ただし、申告することが要件であるため手続きせず放っておいては適用は受けられません。
① 原則
・申告期限内(10か月以内)に遺産分割が完了
・期限内申告書を提出
② 例外(未分割)
・申告期限内に未分割で申告書を提出+3年以内の分割見込書を添付
・分割確定後(申告期限から3年以内)に更正の請求により還付
更正の請求は分割確定後4ヶ月以内に提出する必要があります。
③ 例外(期限後)
・申告期限内に遺産分割が完了していた
・期限後申告書を提出(5年以内)
④ 例外(期限後)
・申告期限内では遺産分割できていないが、3年以内に遺産分割完了
・期限後申告書を提出+3年以内の分割見込書を添付
期限後申告書を出す時点では分割ができているので、「分割見込書」に実質的な意味はありませんが、規定上添付が要件となっているのでつけた方がいいでしょう。
⑤ 例外(相続人が1人)
・遺産分割という概念がないため、相続開始時点で分割確定(③と同じ状態)
・期限後申告書を提出(5年以内)
相続人が1人であればほっといても大丈夫ですが、5年の期限はあるので早めに手続きしましょう。
例外が多くてややこしいですが、逆に受けられないパターンを整理しておきます。
・期限内申告書を未分割で提出したが、分割見込書をつけ忘れた。
・期限内申告書+分割見込書を提出したが、3年以内に分割できなかった。
・3年経過後に期限後申告書を提出した。
小規模宅地等の特例は要件が複雑で、ほっておくと受けられないケースも起こります。
たとえ遺産分割がすぐにまとまりそうになくても、まずは期限内に財産の全容をつかんで特例が使えるよう想定しておきましょう。