相続税と所得税の申告期限のズレ

posted by 2023.03.2

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 前回まで、相続と期限との関係を民法等の改正や相続税への影響を含めて解説しましたが、そこからのスピンオフで譲渡所得についても見ていきます。

 

 相続した不動産や株式を売却した場合、負担した相続税を譲渡所得の取得費として控除できます(相続税の取得費加算)
これは相続税を支払ったことも不動産を取得するためのコストの1つと考えるためです。
なお、売却には期限があり、申告期限から3年以内(亡くなってから3年10か月以内)に売却する必要があります。

 

 ただし、時系列で考えると計算ができないケースも出てきます。

<例>
・令和4年 8月31日死亡   ⇒相続税申告期限 令和5年6月30日
・令和4年11月30日不動産売却⇒所得税申告期限 令和5年3月15日

 相続税の申告期限は10か月以内でギリギリになることも多いので、所得税の申告期限である3月15日を超えてしまいます。
売却したので相続税の取得費加算を使いたいのですが、相続税が確定していないので計算することができません。
この場合はどうすればいいのでしょうか?

 

① 所得税申告(令和5年3月15日まで):取得費加算なし

② 相続税申告(令和5年6月30日まで)

③ 所得税の更正の請求(令和5年8月31日まで):取得費加算を使って還付

 ③の更正の請求の期限『相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2か月を経過する日』です。
通常、更正の請求は5年間はできますが、相続税の取得費加算に関してはたった2か月しかありません。
申告期限から2か月ではなく、申告書を提出した日から2か月というのも特殊です。

 

 ちなみに相続税を未分割で期限内申告していて、その後申告期限から3年以内に分割ができてからする相続税の更正の請求の期限『分割が行われた日の翌日から4か月以内』となっています。
こちらも期限が短いのでっ注意が必要です。

 

 なお、相続税の取得費加算の特例は、相続が未分割であっても相続税を払っていれば適用があります。
その後、未分割が分割になって相続税の更正の請求4か月以内に行うと払った相続税が減ることになります。
すると取得費が減って譲渡所得が増えるので修正申告が必要になります。

 

 堂々巡りのような話で複雑ですが、相続税の取得費加算は”払った税金が経費になる”という特殊な規定なのでやむを得ないかも知れません。
税額の変動や手続きの期限について丁寧に確認するようにしましょう。