電子契約と印紙

posted by 2022.07.7

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 電子契約書を目にする機会が増えました。
お堅い自治体でも検討している事例や実際に導入しているところも出てきています。

 背景には効率化以外にコロナ禍もあり、非接触で契約ができる点が注目されているということもあります。
電子契約には電子署名が必要で、民間のサービス提供事業者が暗号化技術を使った認証サービスを実施することで、信頼性や正当性を担保しています。

 

 税務面では電子契約は印紙がいらない点が大きなメリットとなります。
印紙がかかる代表的な契約書として次のようなものがあり、金額がかさむ場合や契約数が多い場合はサービス利用料を考慮してもかなりの軽減になります。

・第1号文書:不動産売買 (200円~48万円)
・第1号文書:金銭消費貸借(200円~60万円)
・第2号文書:請負契約書 (200円~60万円)
・第7号文書:継続的取引 (4000円)

 なぜ電子契約だと印紙が要らないかというと、印紙は「文書を作成」した場合にかかる税金であるためです。
具体的には紙の書面に書いて交付することが「文書の作成」なので、電子データは紙でもなく、送信はしますが交付はしていません。
電子データを紙で打ち出すことはありますが、あくまでコピーに過ぎず、ハンコを押さない限りコピーには印紙はかかりません。

 

 そもそも印紙はなぜかかるのでしょうか。

 印紙税は明治6年に地租改正と共に導入された歴史ある税金ですが、次のような根拠で課税されます。

・経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定される
・文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化する

 記載内容を国が保証してくれる訳でもないのに釈然としないところはありますが、それなりの取引をしていて担税力はあるし、契約書作成のメリットもあるのだから流通税の一種として少額は負担して下さい、という理屈です。

 この理屈から考えると電子契約に印紙税がかかってもおかしくなさそうですが、文書作成という課税要件を満たさないため、現状ではかからないと解釈されています。

 

 電子契約が本格的に普及していくと1兆円にも及ぶ税収がどんどん目減りしていることになりますが、国としてはそれを受け入れるのかどうか気になるところです。
海外には印紙税がない国も多いし、課税根拠が釈然としない税金なので経済活性化のためにもフェードアウトしていって欲しいなと個人的には思います。